第二章
[2/3]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
こに彼の顔があった。
「何でこんなところにいるのよ」
「ちょっとね」
「ちょっとじゃないわよ。あんたの部活は朝は何もない筈でしょ」
「うん」
友一はにこにことしてそれに頷いた。彼は写真部に所属しているのである。彼女の写真を持っていたのはその為でもあったのだ。
「じゃあどうしてここにいるのよ」
「それは決まってるじゃない」
彼はにこにことしたままそれに答えた。
「決まってるって?」
「そうだよ。僕はね、洋子君に会う為にここにいるんだよ」
「またそんなこと言って」
それを聞いてその細く緩やかなカーブを描いている眉を歪めさせた。歪んだあまり左右のその眉が輪を描いて繫がりそうであった。
「からかうのもいい加減にして」
「からかってなんかないよ」
「それじゃあ何だっていうのよ」
「好きなんだよ」
「・・・・・・もう聞き飽きたわ」
一日に何度も聞いている。耳にタコができるというレベルではなかった。
「馬鹿馬鹿しい。朝から不愉快にさせないでよ」
「けれど僕は気持ちいいよ」
「私に会ったから?」
「うん」
「・・・・・・くっ」
それを聞いて何故か顔がほんのりと赤くなるのがわかった。自分では納得がいかなかった。
「嘘ばっかり」
「嘘なんかじゃないよ」
「嘘にしか見えないの、あんたの場合」
そしてそう言い返した。
「私だってね、あんたのことは知ってるのよ」
「洋子君のことが好きなことをだね」
「まさか。あんたがどれだけの女の子に声をかけてきたか。学校で知らない人なんていないじゃない」
「昔はね」
彼は言った。
「けれど今は違うのさ」
「どうだか」
「じゃあ証拠を見せようかい?」
「何?また写真か何かなの?」
「ううん、もっと別のものさ」
「何なのよ、一体」
「ほら」
彼は自分の右腕を洋子に見せた。そこには千切れた輪があった。
「それって・・・・・・」
「ミサンガさ」
彼は言った。
「これが千切れるとね、願いが適うんだよ」
「聞いたことはあるわ」
わりかし有名な話である。彼女も知っていた。
「私は信じていないけど」
「けれど僕は信じているのさ。そしてそれは適うんだ」
「何を願ったのよ」
「決まってるじゃないか」
そう言って洋子を見る。
「僕と洋子君がずっと一緒になれるようにって」
「ばっ」
それを聞いて今までほんのりとした彼女の顔の赤が爆発したように真っ赤になった。
「何馬鹿なこと言ってるのよ!どうして私があんたなんかと!」
「嫌だなあ、照れなくてもいいのに」
「照れてるんじゃないわよ!あんたなんか大嫌いなんだから!」
「そんなに嫌い?」
「当たり前でしょ!この世で一番嫌い!顔も見たくなんかないわよ!」
「まさか」
「昨
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ