第一部 刻の鼓動
第二章 クワトロ・バジーナ
第四節 強襲 第三話 (通算第38話)
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葉である。
「うっ…」
通路で空気の濃度を確かめるためにバイザーを開けていたシャアが噎せた。コロニーの空気がかなり汚れていたからだ。
一般のコロニーでは空気が汚れないように配慮されている。宇宙では空気が最も大切な資源であり、幾度も浄化装置を通し、地上とほぼ同じ構成比率に再調整される循環システムを通して供給されていた。全ての居住コロニーでは排気規制が設けられ、空気を汚すタバコなどは高い税金が課せられている。例え工業コロニーであったとしても巨大な浄化装置が空気を一定のレベルに保っていた。さらに、コロニー内の移動は車は全てエレカかリニアトレインであり、全ての重機が環境保全を義務づけられていた。唯一の例外は軍用兵器――特にMSである。
つまり、空気が汚れていると感じさせられたということは、このコロニーが軍事利用を主眼としていて、一般住民等に考慮する必要のない場所であることを意味していた。機械油、推進剤、火薬などの様々な匂いが混ざりあい、排熱によって淀んだ戦場臭とでも言うべき独特の臭いが立ち込めていた。
「ここまでグリプスの基地化が進んでいるとは…」
埋め尽くさんばかりの工場が見えるということは、隔壁の向こうは軍事教練の演習場か新兵器開発の実験場になっていると考えるのが普通である。しかし、軍事施設もこちらにあるということは隔壁の向こうで行われているのは――「まさか……な?」
嫌な予感はしたが、それを確かめる余裕はない。シャアの任務はグリプス基地化の進捗と、ガンダムと目される新型MSの偵察および拿捕であり、グリプスの実情は視認できればそれでよい。グリプスの内情を精査することではないと気持ちに区切りをつける。
密閉型と同じ改造が施された〈グリーンオアシス〉の中心部――無重力地帯には人工太陽が設けられている。基本的に熱源として造られてはいないが、コロニー内壁を照らす光量を出しているので、高熱を発している。シャアはそこに近づき過ぎぬ様にしながら、ハンドジェットを噴かしてコロニーの内壁をカメラに収めた。
ミノフスキー粒子発見以来、磁気メディアはおろか光学メディア、電子メディアも姿を消し、フィルムペーパー内蔵のカメラが登場していた。シャアの持つカメラも軍用のフィルムペーパータイプである。
デジタルズームが地表の工場群に自動でフォーカスする。シャアはオペラグラスさながら覗き込むだけで良かった。記録時間は六時間。多機能補正によりピントが合わない映像は殆どない。そのカメラに黒い影が写った。
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