第一部 刻の鼓動
第二章 クワトロ・バジーナ
第四節 強襲 第二話 (通算第37話)
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サイド7〈ノア〉の一バンチコロニー〈グリーンノア〉と二バンチコロニー〈グリーンオアシス〉の巨大な全景が三機の遥か前方に浮かんでいる。この宙域には他に建造物も天体もない。L2を中心に描かれる楕円のハロ軌道は2つあり、現在、〈ルナツー〉と〈サイド7〉は最も距離の遠い位置関係にある。太陽に最もL2が近づくこの時期だけが、ミノフスキー粒子の撒布なしにコロニーに取り付くチャンスだと言えた。
レーダーはミノフスキー粒子の他に太陽風や磁場に干渉されるとはいえ、常時監視するには広い範囲を警戒できるため、いまなお軍用民生用を問わず基地や兵器、一部の家屋に設置されている。しかし、レーダーは万能ではなく、ジャミングと磁場に弱かった。死角をフォローするために視認探査も行われてはいたが、大型な天体ならばともかく、十メートルオーダーの人工物を見つけられるはずもない。敵の哨戒部隊に出くわさない限り、発見の心配はなかった。
他に何もない上に距離感が掴みにくい宇宙空間ではセンサーが表示する数字を信用するしかない。が、パイロットは高度な空間認識能力を身に付けていなければならず、計器をアテにしない。コロニーは近づかなくともその偉容に圧倒されるほどに巨きい。全長三十二キロメートル余りのコロニーとMSを同距離で俯瞰すれば、二十メートル程度のMSではけし粒にもならない。うっかり接触しようものなら、コロニーの慣性の力に木端微塵になる。迂闊に近寄れるものではない。深淵の彼方で瞬く星よりもけし粒ほどのMSごときは宇宙に溶け込んでしまうことだけが、シャアたちの強みである。機体が噴き出るスラスターの光がなければ視認での発見はまず不可能だ。
赤い《リックディアス》が片手を紺の機体に、紺がもう一機に手を伸ばす。三機の《リックディアス》が接触したまま、連動した。通信を傍受されないために『お肌の触れ合い会話』をするためだ。
「アポリー、ロベルトはグリーンノアを監視してくれ。私は手筈通りグリプスに潜入する」
(諒解。)
ロベルトはジオン訛りの強い、アポリーは滑らかな標準語で返した。サイド3は独立の気風が強かったため、言語の英語化が緩く英語をベースにドイツ語と日本語が混ざった独特な訛りが有名である。技術畑の職人気質が強いといえば、分かりやすいだろうか。シャアの部隊などでは流暢な英語を話すアポリーとシャアの方が珍しい。それだけに叩き上げの古強者が多かった。
よくみれば三機の《リックディアス》が背負うグライバインダーの中央にはエンブレムが削られた痕があり、所属不明を偽装していた。ただし、シャアの機体だけはQとVをあしらったパーソナルエンブレムが胸部中央に白く映えている。己を誇示するかのようなその模様はアメリカ的な派手派手しいものではなく、家紋のように落ち着きを備えていた。
随伴する二機にコロニーの
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