第一部 刻の鼓動
第二章 クワトロ・バジーナ
第三節 過去 第五話 (通算第35話)
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「よく来たな!」
エルンストらが艦橋に入ると、ヘンケンは作戦間際だというのにノーマルスーツも着用せず、待ちかねたという顔で、エルンストらを歓迎した。大きく両手を広げてエルンストにハグをしようとするヘンケンに対し、エルンストは邪険にして握手で返す。
「ラテン風の挨拶は苦手なのを忘れたか?」
エルンストは口の端に苦笑いを乗せて、ヘンケンは豪快な笑いで堅い握手を交わした。ヘンケンとエルンストは旧い知り合いである。ジオン共和国にまだ連邦軍が駐留していた頃、派遣艦隊の新米士官として赴任したヘンケンは、エルンストと共にサイド3のガーディアンバンチでとある事件に巻き込まれ、互いに背を任せたことがあった。
「貴様と轡を列べて戦う日が再び来ようとは…な」
「俺は必ずくると思っていたさ」
互いに懐かしむように笑ってみせる。これは二人の芝居でもあった。ジオン側の警戒心を解くために打ったのである。が、二人の心に嘘はない。
もともとエゥーゴは過激派の集団ではなかった。エレズムを根本とし、主義・民族・国家・人種――そうした人のシガラミを超えて、人類を真の意味で解放することを目的として掲げ――実質的には尖鋭化するティターンズへの対抗手段として、三年前、ブレックス・フォーラ准将によって秘密裏に結成された反地球主義組織連合である。ただし、現実的には全地球圏連合宇宙軍を隠れ蓑にしていることもあり、武断傾向が強い。
エレズム――地球聖地主義が、地球に帰ることのできないスペースノイドに自然発生したのは至極当然である。エレズムが民間レベルの宗教観とでもいうべき思想であったのに対し、コントリズム――サイド国家主義は具体的かつ政治的な運動であり、共にスペースノイドの自立を主旨としていながら手段を違えていた。旧世紀に例をとると、エレズムはダイサク・イケダの人間革命に、コントリズムはマーティン・ルーサー・キングJr.の公民権運動に似ている。
エレズムとコントリズムはジオン・ダイクンという旗頭を得て融合し、ジオニズムとなって、ジオン共和国という結実をみせた。これはジオン・ダイクンの現実的な限界とも言えるが、それだけ抑圧されていたスペースノイドの憤懣が捌け口を求めて、受け皿を求めていたとも言える。ダイクンはその受け皿を理想の具現化の道具と考え、独立を人類全体に拡大しようとして失敗し、暗殺された。目的と手段の順序が逆転したことで理想が政治の腐臭に敗れたと言える。
旗頭を喪ったジオニズムは暴走を始め、軍事国家という奇形児を生み、一年戦争という悲劇を引き起こした。その結果、スペースノイドとアースノイドの間に埋めがたい溝を穿った。インド独立の父マハトマ・ガンジーのような独立方法もないではなかったが、連邦はガンジーらが相手にした英国と比較にならぬほど巨きく圧倒的であった。
エレズムからコン
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