第一部 刻の鼓動
第二章 クワトロ・バジーナ
第三節 過去 第三話 (通算第33話)
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はサングラスに遮られ、ヘンケンには窺うことができなかった。
「トーレス、通信回線を開け」
「了解!」
ほどなく、メインスクリーンに《チバーヌス》の艦長エルンスト・ミューラ大佐が映し出された。如何にも職業軍人というストイックな雰囲気と生真面目さを滲ませつつ、鋭すぎぬ眼光は多くの乗組員の信頼を得ているだろうことが判る。
「エルンスト!」
「ヘンケン中佐――いや、昇進されたのだったな。ヘンケン艦長。すまないが、大尉はいるか?」
旧知の間柄であるからだろうか。ヘンケンを無視した形でクワトロに話を向けた。表情に訳ありの感がなければ、いくらヘンケンといえども不快に思ったことは疑うべくもない。
「なにか?」
「大尉には急ぎこちらに戻ってもらいたいのだが……」
シャアとヘンケンが顔を見合わせた。予定ではブリーフィングを《アーガマ》で行った後、《チバーヌス》に宙域警戒を任せ、単艦で潜入を図る手はずである。そして、シャアはその潜入部隊の隊長であった。エルンストがそれを知らぬ筈がない。知っていてそういう事は、予期せぬ事態が起こっているということに他ならない。
「ブリーフィングの後……ということではいけませんか?」
シャアの言い様は上官に対してのものというより、年上の部下に対するようにも聞こえる。この差し迫った時間のない中では上位者としてエルンストの言い分を通させない方が良いと判断したのだろうか。
「それでも構わないが、必ず艦に戻ってもらいたい」
「時間がないぞ?」
ヘンケンが口を挟む。
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