第二十三話 大人の気持ち?
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お気持ちは理解できますけどねぇ……」
2人の視線の先には、快調なピッチングを続ける紅緒と、そのボールを受け止め続けるジャガー。アウトをとる度、ジャガーは実に良い笑顔でバックに声をかけ続ける。2年生ながら、まるで野手陣の面倒を見るお母さんのようであった。
「でも、ジャガーがキャッチャーになって、明らかに良くなりましたよ」
「え?普通じゃね?」
「品田さんが、ちゃんと緩急使って、柔軟な配球をするようになってますよ。あの球速がありますから、こういう織り交ぜるピッチングをすると、そうそう打たれないですよね。」
「……確かに。今日はキャッチャーのサインに素直だな。」
「私の勝手な想像ですけど、品田さんがこれまで強気一辺倒な投球だったのは、紗理奈キャプテンがキャッチャーだったからじゃないかと思うんです。1年の時から4番と5番、地元出身と都内出身。品田さんの事だから紗理奈キャプテンとも張り合う気持ちが強くて、紗理奈キャプテンの出す変化球のサインに素直になれなかったんじゃないですか。」
「ああ。それがジャガーだったら」
「変化球のサインも受け入れられるんですよ。ジャガーは品田さんも古くから知ってますし、ああやって下手に出る相手の方が品田さんは言うことをよく聞くんです」
「……やっぱ紅緒ちゃんマジでめんどくせーなぁ……」
三者凡退に切ってとり、紅緒はジャガーに駆け寄って「ナイスリード!」と言って頭を撫でていた。自分より立場が下の者に対しての方が優しく素直になれるらしい。全く困った、女版ガキ大将である。だからいつまでもチビでロリなんだ、多少ケツはデカくなったけど、と権城は内心でつぶやいた。
「ここから先を勝ち上がる為には、品田さんの力をできる限り引き出すのが大事だと判断したんでしょう。紗理奈キャプテンは自分のキャッチャーへの拘りもあったでしょうに、チームの為に自分が折れる事ができるんだから、やはり立派な方だと思いませんか?紗理奈キャプテン、これまで10年キャッチャー一筋だったはずですよ」
「ま、子どもと大人がカチ合ったら、大人が折れないとなぁ……」
「権城さんは大人の気持ち、分かる人でしょう?だったら、大人になって下さいな。」
眼鏡の奥の目がキラキラと輝きながら権城を見てくる。権城はまたため息をついた。女ってズルいよなぁ。特に可愛い奴は。
「権城、次代打!」
そうこうしているうちに、ベンチから声が飛んでくる。紗理奈采配はここで勝負をかけるつもりらしい。
「頑張って下さいね!」
「ああ、一発かましてくるよ」
タイガーに見送られて、権城はブルペンから打席へと向かった。
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