風に消える慟哭
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弾ませながら東屋に向かっていた。
――早く、早く、秋兄様と話したい。たくさんお話をして、秋兄様の事をもっと知りたい。私の世界も広げたい。
求める心をそのまま表すかのように、彼女の脚は自然と速足を踏んでいた。
今日は月も居ない。二人共が新たな交流を優先させる為に、しばらく侍女仕事に専念する事になって秋斗はここ数日一人であった。
「――――って感じでさ、風は酷いんだ。いっつも寝てやがったし」
「ふふ、いつもそうですよ。しかしデコピン、ですか。今度してみるのもいいかもしれません」
「頭を叩くのが億劫ならツッコミの仕方を霞に習うのもありだと思うが? こう……寝とんのかいっ! って感じで」
「ふむ、独特の役目を取ってしまうのも悪いので、デコピンの方が私向けかと」
「えー、稟が霞の言葉を使うのもいいと思うんだがなぁ……」
楽しげな声が朔夜の耳に突き刺さった。
むすっと口を尖らせて、彼女は東屋に近付いていく。
「お? 朔夜の仕事が終わったみたいだ」
まだ遠く、ふりふりと手を振る秋斗に朔夜は一寸心臓が跳ねるも、さらに口を尖らせて近寄って行った。
「朔夜が来ましたので私はそろそろ行きますね。またお話しましょう、秋斗殿。今度は風も一緒に」
「ああ、またな、稟」
「お二人の時間を邪魔はしませんよ、朔夜」
「……お仕事、頑張ってください」
ズキリ、と胸が痛んだ。仲良さげに、目の前で真名を呼び合う二人を見て。
通り過ぎ様、優しく微笑む稟に返せたのはそっけなくつまらない一言。苦笑を一つ、稟はススッと立ち去って行った。
――これが嫉妬、ですか。苦しいです。醜いです。鳳雛ならまだしも、稟ちゃんになんて。
愚かな事だと理解していながらも、彼女の心を焦がす感情は抑えられない。
秋斗と出会ってからの半月で、前よりも豊かになった感情がうねりを上げて心を埋め尽くす。
これはいい事なのか悪い事なのか、朔夜には分からなかった。
「さて、お茶請けはせんべいしかないんだが、勘弁してくれな」
どうにか不機嫌な朔夜を宥めたくて、秋斗から出たのはそんな言葉。
どんな時も、誰に対しても変わらない彼を感じて、朔夜の心にビシリと痛みが走った。
ふい、とそっぽを向いた。子供らしい、年相応に見える仕草で不満を示す。
後に、彼女は秋斗に近付き……その膝の上にトスっと背を向けて腰を下ろした。
「……なんで俺の膝の上に座るんだ、お前さんは」
「……知りません」
きゅむきゅむ、と掌を握る。何も掴めない自分の不満を表す無意識の発露。これがそういう意味を持っているのだと、自分の握られた手を見て朔夜は感じた。
秋斗はため息を一つ。しかし何も言わずに、彼女の頭を撫で始める。
ビクリ、と一
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