第112話 友との決別
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その烏桓族が生きている可能性は低いです。
「ええ。私が受けた思いを奴等にも教えてやりました」
それ以上話の続きを聞く気が起こりませんでした。
彼女が何をしたのか想像ができました。
「奴等の家族をなで切りにしてやりました。奴等が命乞いをする面前で妻を子供を嬲り殺しにしてやりました」
私は彼女がそれを行なっている光景を想像してしまいました。
白藤の祖母の件同様、惨い光景だったことでしょう。
「もういい」
私は彼女の話を聞いていると辛くなりました。
「いえ、聞いていただきます。あなたは聞く義務があります」
白藤は俺を静止して話を聞く様に促しました。
「私は奴等の目の前で、泣き喚く幼子に剣を突き立て見せつけてやりました」
白藤は私を哀しい表情で見つめました。
「その時、奴等は私に何と言ったと思います」
彼女の次の言葉は言わずとも想像できました。
「『殺してやる』です。奴等は私の祖母を殺しておきながら、そう言ったのです。殺してやるはこちらの台詞。私は怒りに任せ、奴等を斬り殺してやりました。どう、思われます。これでも奴等との共生は可能でしょうか?」
彼女は私に近づき食い入るように私のことを見ました。
「それでも共生の道を模索する」
私は心痛な気持ちで彼女に言いました。
「何故です!」
白藤は私に対して叫ぶました。
「我らと烏桓族の間には埋められぬ溝があるのです。私だけではない。多くの幽州の民が同様の苦しみを受けているのです」
「お前は復讐で救われたのか?」
私は彼女を哀しい表情で見つめました。
「救われる訳が無いでしょ! 奴等を殺しても失われたモノは元通りにはならない」
白藤は俯き小さく独白をしました。
「今でも、幼子をこの手で殺めた感触が頭から離れることはないです。無抵抗の者を斬り殺したこともです。祖母の復讐を望み、それを自らの手で成し遂げたにも関わらず、私は救われることは無かった」
白藤は感情を露にすると、暫く沈黙しました。
「復讐をするまでは救われると思っていました。でも、現実は違いました。私は彼奴等と同じただの人殺しです」
白藤は自嘲するように顔を上げ沈痛な面持ちで私に告げました。
「なら、どうして俺の考えが分からない」
「あなたの仰る通りです。ですが、烏桓族に家族を殺された遺族にとって、幽州の地がいかに豊かになろうと深い傷が癒えることはない。彼らは烏桓族を皆殺しにしたところで失った者が戻ってことないことなど百も承知。しかし、彼らは烏桓族を皆殺しにせねば気が済まない。これは理屈ではない!」
「私は余所者で幽州の民の想いを知ることなどできない。だが、大切な者を失う辛さを慮ることは出来る。お前の話を聞いて、なおさらのこと烏桓族との共生の道を
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