第112話 友との決別
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ていては民は疲弊するだけだ。あのまま放っておけば、いずれかが滅ぶまで血が流れ続けることになっていた。こんな争いは不毛でしかない。お互いが少し歩み寄るだけで、この地は安定し民は安心して田畑を耕すことができる」
私は白藤に訴えるように話を続けました。
「理想論です。人の心はそれ程単純でない」
少し間を置き、他人行儀を貫いていた白藤が感情を表面に現しました。
「為政者は民の為に理想を追い求める責務がある」
「それで奴等に家族を殺された者は救われるのですか?」
白藤の瞳は殺気に満ちた怒りでした。
彼女の怒り様は普通じゃない。
もしや、彼女は身内を烏桓族の者に殺されたのでは・・・・・・。
それなら、頷けます。
あの異常なまでの烏桓族への敵愾心。
「救われないだろう。失った命は何を替えても償えるものではない。私に出来るのはそのような者達を出さないように努力することしかできない」
私は彼女の瞳から目を反らすことなく、彼女を真っ直ぐ見据えました。
「傷を受けし者達に平和のために犠牲になれと仰るのですね」
「そうだ」
私は一拍間を置き重い口を開きました。
「己の名声を傷くことも厭わず、罪人である烏桓族を救った方とは思えないお言葉ですね」
彼女の怒りは頂点に達しているようでした。
私は彼女を見つめ続けるのが辛くなりましたが反らしてはいけないと思いました。
私は「すまない」と、口にしそうになりました。
ですが、それを口にできませんでした。
謝罪は私が楽になるための免罪符でしかありません。
「私は失った命を蔑ろにするつもりはない。争いに倒れた者達は家族を死なせるために戦ったのではない。家族を守るために戦ったはずだ。彼らの犠牲を無為にしないために、私が恨みを買おうとその意思を継ぐ」
私は白藤の態度にたじろぐことなく、彼女を真摯な表情で見つめました。
「お人好しです。どうしもない程に。そして、偽善者だ」
白藤は怒りを納め溜息を吐きました。
「私の祖母は私を救うために単騎で烏桓族の部隊に斬り込みました。あの時の光景は未だ忘れません。幼子の私には奴等が何者か分からず、ただただ恐怖に震えることしかできませんでした。祖母のお陰で私は命を繋ぐことが出来ました」
白藤は私から視線を反らし遠くを見つめ話始めました。
「私は烏桓族を許すことはできない。祖母を惨たらしく殺した彼奴等を!」
白藤は腰の剣に手を触れ、怒りに打ち振るえていました。
彼女は剣を抜き、その剣を私に見易いように持ちました。
「この剣は祖母を殺した烏桓族から取り戻しました」
「その烏桓族は死んだのか?」
聞くまでもないのに思わず聞いてしまいました。
「取り戻しました」と、言っていた以上、
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