第二十二話 無敵艦隊
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「またかよおい!」
「これで本当に1年なのか!?ついさっきまで中坊だったんだろ?」
絶対的柱である紅緒の前を打つ3番センター。
そこにこの春から、天才打者の呼び声高い楊茉莉乃が入った。紅緒の再来を予感させるような強打、俊足そして強肩。元々圧倒的な強打に、更に厚みが増した。
この絶対的3番4番の前に、俊足の哲也、テクニシャンの銀太がチャンスを作り、例え2人が歩かされても1年時から紅緒と並び立ってきた5番の紗理奈、怪力打者の譲二、侮れないスラッガーの月彦が綺麗に塁上を掃除する。
「で、俺はライパチ、と」
茉莉乃加入の煽りを最も食ったのは、誰でもない権城だった。3番という打順、センターというポジション、全て茉莉乃と被ってしまったが為に、しっかり権城は退かされてしまった。
8番ライトという、下手の代名詞とも言うべき打順そしてポジションに左遷された。(ライトに行って左遷とはこれいかに)
権城の成績がダメな訳ではなく、むしろ着実に結果は残しているのだが、茉莉乃がそれ以上に活躍するのだから仕方がない。
ズパァーーン!
ブルペンからは、物凄いミットの捕球音が響いてくる。観客席からは、驚嘆の声が上がった。
「何だあの10番!品田より凄ェ球投げてないか!?」
「サザンクロスはまだこんなのを隠してんのかよ!」
「まだあれ、1年らしいぜ?」
「どうなってんだよ一体!」
姿がブルペンで投げ込んでいた。
ブルペン捕手のジャガーは捕球する度、ビリビリと痺れる左手の痛みも忘れて目を輝かせている。姿のボールを捕る為にキャッチャーをしているらしいから、むしろ試合に出る事よりもこちらの方が幸せなのかもしれない。
「坊っちゃま、素晴らしい球です!」
「まだまだだよ、ジャガー。試合で投げられなきゃ意味が無いんだ。」
姿は至ってクールにブルペンでスタンバイを続ける。
(野手としてもライパチ降格、投手としても3番手降格かよ……俺がこんな扱いなら、甲子園もいよいよ夢じゃねぇな!)
権城は菩薩顏で頷くが、その顔はどこか引きつっていた。
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