第二十二話 無敵艦隊
[1/2]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
第二十二話
「はーい、“勇者チャレンジ”始まるよーん」
実に悪い笑顔。悪意がそこに権現したかのような哲也が、一年生達を震え上がらせる。
この行事も、年度が変わってもまだ継続している。
「それじゃあ、1年A組松山洋!お前が先頭バッターだ!先陣を切れ!」
「はっ、はぃい!」
哲也に指名されたのは、野球部の松山洋だった。少し長めの栗色の髪で、雰囲気もノリも軽く、“大してかっこ良くないけど、チャラさだけは一人前”という、痛いオッサンのような見た目をしている。調子良く先輩の前でネタを披露し滑り倒してからというもの、ひたすらにイジられる役割が定着してしまった。
「よーし、お前ら、見とけよォ!俺が手本って奴を見せてやるからなぁ!」
洋は他の一年生にこう啖呵を切って、両サイドのドアが空いた中廊下を猛然とダッシュする。
それを合図にするかのように、ガスガンが撃ち出したBB弾が洋に殺到した。
「うひゃぉおおおおああああ!?」
「痛っ!いてててててっ!!」
「おぉーーぅまぁーーいがーーーーっ!!」
洋は相変わらずのオーバーリアクションで転げ回り、その顔といい、動きといい、先輩方の腹筋を崩壊させるには十分だった。
「あっははははは!何だよこりゃ!?洋のリアクション芸は安定だなぁ!もう一回チャレンジするのを許可しても良いぜ!ひゃはは!」
権城も、例に漏れず笑い転げていた。
その右手には、ガスガンが握られていた。
……時の流れは、遂に権城を狩られる側から狩る側へと誘ったのである。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
カァーン!
「うわ、また行ったわ」
「何だよサザンクロス。こんなの抑えられる訳ねぇよ……」
野球は春季大会が始まっていた。
南十字学園は、その強打で相変わらず、大会序盤のブロック予選を圧倒していた。もう2年ほどこういう展開が続くと、そろそろ高校野球ファンも南十字学園に注目し始める。
例え雑魚相手に無双しているだけとはいえ、無双もここまでくると立派だからだ。
大会における台風の目を期待される程にはなっている。
バシッ!
「ストライクアウト!」
「こりゃあすげぇな」
「チビなのにこの球威か」
その中心に居るのはもちろん、エースで4番の紅緒。1年夏にいきなりエースで4番で登場しホームラン3本、2年の夏は名門・帝東を力でねじ伏せ、試合には敗れたものの投打に圧倒した。
ミートセンス、長打力共に抜群の打撃力に、140キロを優に越えるストレートによるパワーピッチング。一体この小さな体のどこにこんな力が詰まっているのかと、誰もが思う。この冬には、(人生で初めて)走り込んだ成果もあって、パフォーマンスの持久力が増し、安定感が増した。
カァーン!
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ