第一話 大久保少佐!!剣が白銀に輝く漢その五
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「嫌だった筈だ」
「いじめですか?」
「それが暴力なんですか?」
「いじめもその一つだ」
暴力の中の、というのだ。
「心のない力なのだ」
「そうなんですか」
「いじめはですか」
「暴力なんですね」
「心のない力なんですね」
「そうなのだ。自分がやられて嫌なことは決してしてはならない」
他人に、というのだ。大久保は子供達にこのことも言った。語るその目は悲しみさえ帯びているものだった。
「だからだ」
「絶対にですね」
「暴力はいけないんですね」
「剣道、いや心身を鍛えんとしているなら」
その時点で、というのだ。
「暴力を振るってはならないのだ」
「他の人にですね」
「絶対に」
「人が剣を振るう時はだ」
剣道だった、彼が今子供達に教えている。
「それは誰かを、何かを守る時なのだ」
「自分の為じゃないんですね」
「そうだ、そして好きで振るうものでもない」
こうも言うのだった。
「自分が楽しんで罪もない人に剣を振るうのならだ」
「それがですね」
「暴力なんですね」
「その通りだ」
まさに、というのだ。
「それこそが暴力なのだ」
「楽しんで罪もない人を叩いたりしたら」
「それで」
「相手が動物でも同じだ」
犬や猫にも、というのだ。
「剣は大切なものを護り、そして己を鍛えるものなのだ」
「暴力の為のものじゃないんですね」
「絶対に」
「だからですか」
「僕達も」
「心を鍛えてだ」
そしてとだ、大久保の話は続く。
「自分以外の大切なものの為に戦うのだ」
「はい、わかりました」
「そうしていきます」
子供達は大久保の言葉に目を輝かせて答えてだ、彼の教えの下己を磨いていった。その身体だけでなく心も。
その彼を見てだ、西郷は大きな目を細めさせて言った。
「よかことでごわす」
「はい、そうですね」
「大久保少佐は子供達を正しく導いています」
「子供は珠でごわす」
西郷はこうも言った。
「磨けば磨く程光るものでごわす」
「そうして磨いていって」
「そしてですね」
「そうでごわす、国家の柱となっていくでごわす」
磨かれ成長した子供達がというのだ。
「国家の働き手となりよき父母、兄姉となり」
「そして後の子供達も」
「育てていきますね」
「だからこそ大久保少佐は素晴らしい仕事をしているでごわす」
「よき剣道家としてだけでなく」
「教育者としても」
「そして、でごわす」
教育だけではなかった、西郷が今見ているものは。
「子供達の声がおいどん達の背中を押してくれているでごわす」
「再併合に」
「我等の悲願に」
「大久保少佐はその大義も教えているでごわす」
言うまでもなく純粋な子供達にだ。
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