第一話 大久保少佐!!剣が白銀に輝く漢その四
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「よいか、剣の道とはだ」
「はい、身体を鍛えてですね」
「心も鍛えるものですね」
「そうだ、だから君達もだ」
皆まだ小学生である、大久保はその彼等に強いが澄んだ声で応えていた。
「身体を鍛えるだけでなくだ」
「心をなんですね」
「剣道は心も鍛えないと」
「剣道は礼にはじまり礼に終わる」
よく言われることもだ、大久保はあえて言う。
「礼儀作法を守り竹刀はだ」
「竹刀は、ですか」
「ただ振るものじゃないんですね」
「その通りだ、己の頭の高さで振る」
それが、というのだ。
「それは己を斬る、打つのではない」
「斬るんですね」
「そうするんですね」
「己の弱き心、醜いものを斬るのだ」
こう話すのだった。
「竹刀に込めた己のよき心でな」
「じゃあ先生素振りは」
剣道の基本中の基本であるこれについてだ、子供の一人が右手を挙げてそのうえで大久保に対して問うた。
「自分の悪い心をですか」
「そうだ、自分自身でだ」
「斬るものなんですね」
「そうしたものだ、だから」
「竹刀を振って」
「己の悪しき心を斬れ」
まさにだ、そうすべきというのだ。
「それが素振りなのだ」
「そうなんですか」
「ではいいな」
「はい、じゃあ僕素振りをして」
そしてだとだ、子供も強い声で言うのだった。
「自分の悪い心を斬っていきます」
「そうするのだ。心なき剣は何か」
即ちだ、剣道はというのだ。
「それはあってはならない力なのだ」
「悪い力なんですね」
「君達はよき心を持つのだ」
そうしろというのだ。
「剣道をしていれば」
「そうすればですね」
「具体的に言うといじめはしない」
まずはこれを否定した。
「意地悪もだ、人には優しくするのだ」
「優しく、ですか」
「他の子に」
「そしてちゃんと挨拶をすることだ」
大久保は子供達にわかる様に簡単にも話した。
「そうしないと駄目だ」
「そうしないと駄目なんですね
「剣道をしていると」
「それなら」
「そうしたことが出来ていないと剣道をしても意味がない」
それも全く、というのだ。
「心のない力は暴力だ」
「そうした力はですか」
「暴力なんですか」
「君達も何も理由もなしに殴られたことがあるだろう」
この忌まわしい、誰にも一度は経験のあることも例に出して話す大久保だった。
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