第百八十二話 けいおん
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宇宙暦794年 帝国暦485年12月27日
■銀河帝国イゼルローン要塞
同盟軍がイゼルローン回廊を通過しティアマト星系外縁にてワープするのを見届けたイゼルローン要塞では、帰国捕虜、逆亡命者、ローゼンリッターなどの係累などにテレーゼが労いの言葉をかけていた。
「皆よ良く無事で帰ってきてくれた。妾は大変嬉しく思うぞ。また皆には、慣れぬ辺境での生活などで大変苦労をかけたこと、父フリードリヒ四世に代わり申し訳なく思う」
テレーゼの真摯に語る詫びに皆が皆驚き、兵達や逆亡命者達などは涙ぐむ者達すら見える。正直な所、テレーゼ演技とも言えなくはないが、亡命や捕虜になった者達を気の毒に思い、歴代の皇帝や為政者の悪癖がこれらの事態の原因だと判っているからこそ、真剣に演技が出来るのである。
続いて、宇宙艦隊司令長官エッシェンバッハ元帥が威厳のある声で帰還兵を労い今後のことを話す。
「卿等御苦労であった。良く戻ってきてくれた。さて卿等の此からだが、帰還兵は一ヶ月ほどリゾート惑星で骨休めをした後、軍に復帰するも良し、退役するも良し、今後の身の置き所を決めて貰いたい。全員を一階級昇進させ捕虜の年数に応じた年俸と一時金、更に辺境手当を加算して支給する」
テレーゼとエッシェンバッハの言葉に帰還兵達の顔から不安が消え、笑顔が見えるようになる。
この後、彼等帰還兵は同盟側のスパイ、地球教などの信徒、薬中でないかなどを調べられた後、潔白であった者達の殆どが軍に再志願したのである。
続いて、テレーゼは逆亡命者達を労う。
「卿等が亡命せねば成らなくなった元凶である内務省社会秩序維持局は旧悪が青天の元にさらけ出され者罰を受けた上に廃止された。卿等の無実が判明したのである。しかしそれだけで妾達の罪が消えた訳ではない、卿等に塗炭の苦しみを与えたこと真に済まなく思う」
そう言ってテレーゼは軽くではあるが頭を下げる。皇族が逆亡命者に頭を下げるなど前代未聞であり、その場にいた全員が驚き、そしてテレーゼ殿下の優しさに気づく事で、自然と全員がテレーゼに対して頭を下げ涙ぐむ。
「卿等の、生活も妾が必ず保障しよう。卿等の得意な分野で妾を助けて貰いたい」
「「「「「「「御意」」」」」」」」
心が一つになった瞬間であった。
同じ様に、ローゼンリッターの係累やその家族などにも帝国での生活の保障を約束することで、協力を取りつけ同盟に於いて各種職業に就いていた逆亡命者やその係累などの多くが新たに立ち上げた事業の中核として統制経済に近い帝国経済に新風を吹き込む原動力と成って行くのである。
それ以外にも、率先してイゼルローン要塞で下級貴族は元より下々の者に気さくに声をかけることを続けるテレーゼを兵達は敬愛を込めて“平民姫”“太陽姫”などと呼んでいた。
こ
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