第二十一話 既視感
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イダーはそうそう長打にはなんねぇだろう。)
権城はスライダーを続けた。
同じようなアウトコースに、ピタリと決まる。
茉莉乃は微動だにしない。
ツーストライクとなる。
(おっしゃ!)
あっさり追い込んで幸先の良い権城が心の中で呟くのと同時に、茉莉乃がわざとらしい大きなため息をついた。
「あ〜あ、つまんなぁい。外の変化球投げときゃ抑えられるなんて、なぁんてショボい想像力かしらぁ?」
「あ?」
権城もここまで言われると、ムカつかずには居れない。茉莉乃のお望み通り、ストレートを投げ込む。
(……ビビれ、この!)
しかし、ストレートを決め球に使う訳ではない。そこでストレート勝負すると相手の思うつぼ。むしろ勝負は外のスライダー。一球、挑発を受けて立つ形でストレートをインコースの、頭の高さに見舞う。舐めるな!のメッセージだ。勿論、危険な投球である。
バシッ!
「ボール」
ヘルメットを掠めそうな際どい球。
しかし、茉莉乃は全くのけぞらなかった。
気に入らなさそうに鼻を鳴らし、権城を睨みつけた。
(へーえ。避けなかったな。根性据わってやがんな。)
茉莉乃の視線をそっくりそのままお返しするように睨みつけて、権城はジャガーからボールを受け取る。
(でも今の一球で外の意識が薄れただろう。俺の球速は130前半だが、それでも当たりゃ痛いからな。ビーンボール平気で投げる俺に対して踏み込んではこれんだろ。)
権城は振りかぶる。狙いをつけるのはアウトコース。ギリギリのスライダー。
(さっき煽ったのも実は……外のスライダーが打てないからなんじゃないのか!?)
権城の指先から放たれたボールは、その目論見通りにアウトコースギリギリへ。鋭く曲がり、茉莉乃からは逃げていく。
カァーーーーン!
「え」
権城は打球を振り返った。
レフトに弾丸ライナーが飛び、そのままフェンスの向こうまで消えていった。ホームランである。
「やぁりぃ〜〜!アタシの勝ちねェ!」
喝采を上げながら茉莉乃はダイヤモンドを一周する。権城は落胆よりむしろ、驚愕していた。
(外のスライダーだぞぉ!?一体全体どうやってあんなに完璧に引っ張れるんだよ!?)
センターのポジションでは紅緒がホッと一息ついていた。
(良かったー権城にやらせといて。流石にこいつ抑えるのは、あたしでも骨が折れたわねー。ま、あの球を引っ張りにかかる辺り、バッターとしてはあたしよりも強引で隙はあるけど)
(その強引さがまた、良いかもしれない。ビーンボールの後迷いなく踏み込んだ。そういう思い切り、怖いもの無さこそ、フレッシャーズの特権だから)
球審を務めていた紗理奈は、ウンウンと頷く。また楽
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