第133話 桃香の再就職 前編
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ても県令としての政務に支障がないのは彼女に寄るところが多いのかもしれない。
「頼む」
正宗は視線を環菜に向けた。環菜は正宗の許可を得て桃香の話を継ぎ話し始めた。
「桃香様に変わりましてご説明させていただきます。最近、臨穎県の治所がある街も盗賊の襲撃を受けるようになり、周辺の村の防備が手薄になっています」
「周辺の村を私達に防備しろというのか? それは無理な話だな。お前は私を冀州牧であると承知しているのか? この地に延々と在地できるわけがないであろう」
「劉将軍、滅相もございません。臨穎県の賊の規模が大きくなりほとほと手を焼いているのです。劉将軍には主だった規模の大きい賊の討伐をお頼みしたいのです」
環菜の正宗への返答は正宗の読み通りだった。賊が増えた理由は時勢に寄るものもあるが、愛紗の出奔が大きいと考えていた。仮に賊討伐のできる部将が士仁のみである場合、彼女は無能ではないが凡将の域といえる。愛紗の空いた穴を埋め賊を討伐することは無理がある。その結果、臨穎県の領内に巣食う賊が勢いを盛り返したのだろう。
「潁川の大守もしくは郡尉には賊の件を陳情したのか?」
正宗は環菜の話を黙って聞いていた。
「郡尉に陳情はしております。しかし、郡尉は一向に聞き届けてくれる気配がありません」
環菜は困った表情で正宗に答えた。正宗は目を瞑り黙考した。
「郡尉に陳情書を届けた時の郡尉の様子はどうだったのだ?」
正宗は目を瞑ったまま環菜に質問した。
「陳情書は県令である桃香様が郡尉に直接お届けしています。しかし、郡尉は『検討する』の一点張りでして」
環菜は元気無く尻窄みに言った。正宗は目を見開き環菜の顔を見て口を開く。
「それが事実であれば郡尉の職務怠慢となるが、郡尉が『検討する』と言うには事情があるのでないか? 主にお前達に問題があるとか。この潁川は潁川荀氏縁の地のため治政はなかなか行き届いていると思うのだが」
正宗は椅子の手すりに手をやり、深く腰掛け憮然とした表情で桃香と環菜を見た。
「正宗様、いくら桂花さんのご実家のある郡とはいえ、治政が行き届いている理由にはならなくてよ。ここまで来るまでにも賊と遭遇しているじゃありませんの」
「麗羽、確かにそうだが。元々、桃香達が賊の討伐に苦境に陥っている理由は賊が多いことだけが理由ではあるまい」
正宗は環菜の心の中を見抜くような鋭い視線を彼女に向けた。彼女はその視線に動揺を示した。
「桃香、愛紗はどうしたのだ?」
正宗の言葉に桃香は肩をすくめ、桃香と環菜は微妙に正宗から視線を逸らせた。
「愛紗ちゃん? あ、ああのぅ」
「隠しても無駄だ。士君義から仔細は聞き出している。書き置きを置いて行方を眩ませたのだろう
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