第133話 桃香の再就職 前編
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すると。
「正宗さん! ちょっと待った??????!」
桃香はいきなり天幕内に響く声を張り上げる。その声に天幕内の者達は皆驚く。
「いきなりなんだ?」
正宗も桃香の突然の行動に驚いている様子だ。
「正宗さんにお願いがあってきました」
桃香の言葉を聞き、正宗は黙って椅子に腰をかけ直す。
「衛兵!」
正宗が天幕の近くに立つ衛兵に声をかけると、天幕内に衛兵が入ってきた。
「劉将軍、ご用でしょうか?」
「周大守に伝言を頼めるか? 進軍の準備は一旦取り止め、天幕に戻るように伝えて欲しい」
「畏まりました」
衛兵は拱手して天幕を去って行った。
「冥琳が戻るまで時間があるが、先に話を進めよう。桃香、とりあえず願いを言ってみろ。話だけは聞いてやる」
「翠寧ちゃんから聞いたと思うんだけど、この臨穎県は山賊や盗賊が多いの」
「賊等皆殺しにすればいいだけだろ。真逆、未だに青臭いことを言っていないだろうな」
正宗は言葉の最後で桃香に厳しい視線を送った。
「生まれながらの悪人なんていない。話し合えばきっと分かってくれると思うの」
「じゃあ、私に相談せず、賊共と話あえばいいだろう。お前の持論なら話し合えば賊は悪さをしないはずだ」
桃香は正宗の言葉に沈黙した。その様子から正宗は、桃香が理想と現実の矛盾に気づきはじめたこと、そして未だに青臭い理想論を捨てきれずにいることを察することができた。
「少しは現実を見たようだな。話あっても言葉が通じない相手は必ずいる。その時、自らの正義を示すには相手を力で屈服させるしかない。賊ならば殺す以外にない。暴力を振るう者に言葉等通じるわけはないだろ」
正宗は桃香の顔を見ながら淡々と言った。
「それって悲しい」
桃香は悲しそうな表情を浮かべ正宗を見つめた。正宗は桃香の言葉に一瞬表情が曇るが直ぐに元通りになった。
「悲しかろうと賊を斬らねば自らの正義を貫けない。なら、私は迷わず斬る。お前も掲げる正義があるからこそ、賊と話し合いで解決しようとするのだろう。それが実現できないなら、お前の正義は正義であって正義ではない」
「そうかもしれない。でも、そう思いたいの」
「実現できない正義など正義ではない。只の妄想だ。それに巻き込まれ死ぬ者達の身になれ。お前が自分の正義を貫けなければ、お前のために死んだ奴等は犬死にだ」
桃香は正宗の言葉に胸を抉られたような表情をした。
「話が逸れたな。賊が増えてどうしたのだ」
桃香は正宗の言葉に押し黙ってしまった。
「劉将軍、不肖私めが変わってお話いたします」
環菜が手を上げ正宗に言った。彼女は桃香を補佐するのが板についている様に正宗の目に移った。愛紗が出奔し
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