第133話 桃香の再就職 前編
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「そうだ! そうだ! 正宗さん、ひどいじゃないですか」
桃香は涙を拭きつつ麗羽の側に周り、虎の威を借る狐のように正宗を非難した。正宗は憎たらしい者を見る様な表情で桃香を睨みつけた。桃香は正宗の表情を見て、麗羽の背中に隠れるように移動した。
「麗羽、わかった。調度いい。ここで休憩をとろう。冥琳、差配を頼めるか」
「畏まりました」
正宗は冥琳に言った。冥琳は渋い表情を桃香に向けるが黙って休憩の準備をはじめだした。
「ところでお前は誰だ?」
正宗は桃香と共に現れた女に視線を移し声をかけた。
「劉将軍、お初にお目にかかります。私は糜子仲、真名は環菜と申します」
環菜は正宗を前にして緊張しているのか挙動不信だった。
「環菜、私は劉正礼だ」
正宗は環菜の名が糜子仲だと聞き驚いた表情を返す。糜子仲は史実では劉備とともに放浪の旅を続け最後まで蜀に仕えた忠臣だ。
冥琳が休憩の準備を整えると正宗達と桃香と環菜は正宗の天幕に入っていった。天幕の奥に正宗用の立派な椅子があり、その両隣にそれより少し小さい椅子が配置されていた。その椅子三脚を中心に放射状に椅子が配置され、正宗の正面方向に二つの椅子が位置をずらして置かれていた。
正宗が中央の椅子に腰掛け、正宗の両隣の左右の椅子に麗羽と冥琳が順に座っていた。残りの者達は思い思いに腰掛けた。正宗は立ったままの桃香と環菜を見て座るように促す。二人は促されると思い思いに椅子に腰を掛けた。
「私に何の用だ」
正宗は桃香と環菜が腰掛けることを確認すると、開口一番に桃香に言った。
「正宗様」
麗羽が正宗を困った人を見るような表情で見ていた。彼女の表情からは「大人の態度」で接してくださいと言っているように読み取れた。正宗は一瞬考えた後、気を取り直し桃香に視線を戻した。
「桃香、久方ぶりだな。月華(盧植)先生はご健勝か?」
「月華先生は幽州に帰ったはずだと思うんだけど」
桃香は正宗のことを不思議そうに見ていた。
「どういうことだ?」
「正宗さん、知らないの? 先生は病気になったんだけど、洛陽より故郷である幽州で療養したいからって帰郷したの。正宗さんのことだからてっきり知っていると思っていた」
「初耳だぞ。冥琳知っていたか?」
「いいえ。私も初めて知りました」
「一度、お見舞いしたいですわね」
月華の現状に正宗と冥琳は困惑し、麗羽は月華の身を案じていた。
「それはいつのことだ」
「んぅ〜。半年位前かな」
桃香は唸りながら記憶を手繰って答えた。
「随分前だな。桃香、教え子のお前が月華先生を一人で幽州に送ったのか。なんて薄情な奴なんだ」
正宗は憮然とした表情
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