第133話 桃香の再就職 前編
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ん、酷いじゃないですか!」
桃香は開口一番に正宗を非難した。彼女に少し遅れ太めで体の大きい女が追いついてきた。正宗はとりあえず、その女のことを無視し桃香に視線を戻した。
「桃香、久しぶりだな。悪いが私は先を急いでいる。失礼するぞ」
「ちょっと、待って!」
正宗が馬足を早めようとすると桃香は慌てて正宗を止めた。
「酷いじゃないですか!」
桃香は正宗に対して抗議の視線を送った。彼女の様子は若干焦っている様子に見えた。
「何がだ? 桃香、私は荊州に行かねばならないんだ。お前とのんびり話をしている暇はない」
正宗は麗羽に注意されたことを少し気にしてか、言葉と裏腹に表情は桃香への悪感情を現すことなく平静を保っていた。
「普通は『久しぶりだから、ご飯でも食べながら話でもしようか』とか言いませんか?」
「言うわけないだろ。お前と私の仲は良くないだろ」
正宗は桃香の押しに引いた表情になった。
「酷いな〜。私は親友だと思っていたのに〜!」
桃香は頬を膨らませ正宗を睨む。その睨みは相変わらず迫力は無かった。この人畜無害の雰囲気に人は騙されるのだなと思う正宗だった。
「要件は何だ? 私と飯を食うためにここまで追いかけてはこないだろ」
正宗は桃香に本題を切り出した。彼はここで延々と無駄な言葉遊びをしても時間の無駄と考えたのだろう。
「ええと」
桃香は正宗の言葉に視線を泳がせ挙動不審な態度を取った。正宗、冥琳、そして麗羽も桃香の雰囲気から彼女が正宗達と旧交を温めるために追いかけてきたのでないと確信に変わった。
麗羽は困った様な表情で桃香を見ていた。彼女は正宗と冥琳が桃香にこれから彼女に要求する内容を理解しているだけに彼女へ少しばかり同情したのだろう。二人の話では桃香の配下である愛紗は有能な部下という話だ。幾ら出奔したとはいえ愛紗が桃香の元に帰参する芽を摘むことは桃香にとって大きな損失になることは目に見えて分かる。
「『ええと』ではわからないだろう」
「はは。あの〜。え〜と」
桃香は罰が悪そうに頬をかきながら正宗から視線を逸らし周囲に視線を泳がせ麗羽で視線を止めた。桃香は瞳を潤ませ救いを求めるように麗羽を凝視した。麗羽は桃香の態度にほだされたのか桃香を援護射撃するように口を開く。
「正宗様、話を聞いてあげてはどうですの? 聞くだけなら、そう時間は取りませんわ」
麗羽は正宗が最初から桃香の頼みを聞く腹づもりを知っていた。これ以上桃香をいじめるような真似をさせたくなかったのだろう。しかし、正宗と冥琳は麗羽のこの行為に渋面になる。二人は桃香の頼みを聞くつもりであったが、できれば桃香と関わり合いたくなかったのだろう。三者の温度差がここに現れた。
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