第133話 桃香の再就職 前編
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羽も背後を気にしだした。
「正宗様、強行軍の件はわかりましたわ。でも、後ろの方で叫んでいる人は誰ですの? 私達に用が有って追いかけているのではなくて」
麗羽は正宗に声をかけつつ、声の聞こえる後方を目視しようと目を細めて凝視していた。
「こちらに馬に乗って二人の方が向って来ていますわ。正宗様、あの人達は誰なんですの?」
麗羽は馬の足を止め、向ってくる人物を見ていた。正宗は一瞬逡巡するが口を開く。
「多分、桃香だ。昨夜、村を守備していた部将は桃香の配下だ」
正宗は後方を気にしながら麗羽に答えた。
「桃香……さん。ええと。確か幽州でお会いしたことがありましたわね」
麗羽は眉根を寄せ記憶を思い出しているようだった。
「正宗様。麗羽様。悠長に話をしている時ではありませんよ。このままだと追いつかれます。正宗様、追いかけてくる二人の内一人は劉備で間違いございません」
冥琳は正宗に追いかけてくる者達のことを告げた。彼女は正宗と麗羽の会話を盗み聞いたのか既に桃香のことを隠す気配はない。
「日の出前の早朝に出立したはずだが、こうも早く桃香に追いつかれるとはな。あの桃香がこれだけ迅速に動くとは面倒事の臭いがする。麗羽、急ぐぞ」
麗羽は正宗と冥琳の剣幕に困惑気味な様子だったが、二人の様子に何かあると考えたのか二人に促されるまま馬を走らせはじめた。
「あ??????! やっぱり、正宗さんだ! どうして無視するんです!」
正宗にとって聞き覚えのある女の声が彼の背後からはっきりと聞こえた。正宗も声の主の正体に気づいていたようで柳眉をしかめた。冥琳も同じような表情をした。麗羽は騎乗し、こちらに向ってくる二人の内の一人を凝視して思案顔だった。
「正宗様は桃香さんと浅からぬ因縁があるのかもしれませんが、ここまできたら会うしかないのではなくて」
麗羽は正宗の表情を窺うように見つめた。彼女は桃香から実害を被っていないため、桃香に悪意を抱いていないのだかた当然の反応といえた。正宗と冥琳は渋面を麗羽に返す。
「桃香と関わるべきでない。私と冥琳が強行軍を行なった理由の原因は『桃香』にある」
「わかっていますわ。でも、追いかけてくる彼女をどうしますの? このまま走っていてもいずれ追いつきますわ」
麗羽は正宗に対し現実的な意見を返し後方に視線を流した。麗羽の言う通り、このままでは正宗達はいずれ桃香達に追いつかれる。歩兵を引き連れる正宗達では馬で追いかけてくる劉備達を撒くことはできない。正宗は悩む表情になった。
「私がここに残ります。正宗達と騎兵のみ潁陰県へお急ぎください。私は歩兵を引き連れ正宗様達に遅れ潁陰県に向います」
冥琳が正宗と麗羽の会話に入ってきた。
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