第133話 桃香の再就職 前編
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正宗一行は潁陰県まで七十里位の地点を行軍していた。彼らの陣容は歩兵の割合が多かったため歩みが騎馬兵に比べ遅く、正宗と冥琳を苛立たせる結果となった。その苛立ちを二人は表におくびにも出すことはなかったが、しきりに兵達が進んできた方向に目線を送っていた。
「正宗様。それに冥琳さん。さっきから後ろばかり気になっているようですけど、何かありますの?」
麗羽以下、他の部将が気になっているであろうことを麗羽が二人に聞いた。二人は彼女に声をかけられると一瞬肩を堅くして間を置き彼女の方を向いた。
「麗羽、何もない」
「麗羽殿、何もありません」
二人は揃えたように同じことを喋った。麗羽は二人を訝しむように凝視する。その視線を受け平静を装う二人。
「もしかして。昨日、賊に襲撃された村を守備していた部将に関係ありますの?」
正宗と冥琳は表情を変えず平静を装うとしたが、正宗は若干表情に動揺の色が浮かんでいた。それを麗羽は見逃していなかった。
「図星の様ですわね。何か変と思ってましたの。昨夜の村までの道程では定期的に休止を取っていましたのに。今日は未だ一度も休止無しの行軍。流石に兵士も疲労を隠せませんわ。こんなところを賊に急襲されては不味いのでなくて」
麗羽は憮然とした表情で正宗を見た。彼女は正宗と冥琳だけで秘密を共有して、自分だけ仲間はずれにされたに立腹した様子だ。冥琳はばつの悪そうな表情で正宗の方を見た。
「隠そうと思ったわけでない。潁陰県の県境に入れば麗羽にも説明するつもりでいた」
「そうなんですの?」
麗羽はジト目で正宗を見ていた。正宗は麗羽の視線に気まずくなるのを紛らわすように喋り出した。
「兵達には悪いと思っている。潁陰県の県境に入れば兵達に十分な休みを取らせる。賊の急襲があれば、この私が蹴散らす。麗羽、ここは黙って私に従ってくれないか」
麗羽は必死に弁解する正宗を見て嘆息した。
「わかりましたわ。休みを取る時には今回のことのあらましを教えてください」
彼女は穏やかな表情で正宗に言った。麗羽とのわだかまりを解消したのも束の間、来た道程の後方から声が聞こえた。遠方から叫んでいるのか声の内容が聞き取り難い。
「あの声は何かしら?」
麗羽は遠くを見るが、正宗と冥琳は素早く行動に移った。冥琳は表情を険しくして軍の後方に向った。彼女は兵士達に行軍速度を上げるように檄を飛ばしていた。
「麗羽、話はこれで終いだ。詳しい話は潁陰県に入ってからだ!」
「わかりましたわ」
麗羽は戸惑いつつも正宗の剣幕に押され言われるがままに返事をした。正宗は後方から聞こえる声を無視して進軍速度を下げることはない。次第に後方から聞こえる声は段々大きくなってきた。それに伴い冥琳や麗
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