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Ball Driver
第十九話 人を巻き込め
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良いと頷いた。

「もちろん、決まってるじゃないですか」
「でも、ここではまずくない?」
「だから行くんじゃないですか」

権城は紅緒の手を強く引っ張った。
紅緒の小さな体は軽い。吹っ飛ぶようにして、権城の側に引き寄せられる。
権城はそのまま、校門から飛び出して、学校の裏の山に向かって走りだした。

「ちょっ!どこ行くの!?」
「どこにでも!」

権城は紅緒の手を強く握ったまま、夜の森を走った。



ーーーーーーーーーーーーーーーーー



「はぁ、はぁ、はぁ」

紅緒は艶かしい唇を大きく広げ、がむしゃらに息を吸い込み、吐き出す。顔には玉になって汗が浮かび、眉間には苦しそうな皺が寄る。
紅緒はズバ抜けた瞬発力と野球センスを誇っているが、スタミナはあまりない。しばらく山道を走ると、既に限界に達していた。

「ちょ……結局どこに……」
「良いからついてきて下さいよ」

グロッキーな紅緒の手を、それでも権城は離さない。強く引っ張り、ペースを守って走らせ続ける。権城はマラソンが大の得意なのである。紅緒を引っ張りながら走っても、権城にはまだまだ余裕がある。

「はぁ、はぁ、はぁ」

もはや権城に引きずられるようにして、紅緒は走っていた。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「はぁ、はぁ、はぁ」
「ほら、ゴールはもうすぐ!」

紅緒は限界をとうに越え、今は殆ど権城に抱きかかえられるようにして走っていた。キリキリと痛む脇腹を押さえ、呼吸がほぼ喘ぎになっている。目尻にはあまりの苦しさに涙が浮かんでいた。
ちなみに、権城は何ともない。

ゴールに到達し、権城が足を止めて手を離すと、紅緒はその場に崩れ落ちて仰向けに寝転がった。
周囲は、普段見慣れている風景。
そこは学校の校門だった。

「ちょっ……何よこれ!校門に帰ってきてるじゃない!」

汗と涙でグシャグシャの顔で、紅緒は権城に怒鳴った。権城は汗を拭いながら、涼しい顔で言う。

「はい、そうですよ?山道ランニング一時間コースはいかがでしたか?」
「どうもこうもないわよ!すっごく……苦しかったァ……」

紅緒の目に、またジワリと涙が滲んできた。
いつもの強気はどこへとやら。苦手のマラソンをほぼ強制的にやらされて、それはそれは相当に辛かったようである。

「いやー、僕も結構キツかったですねー。何せ紅緒ちゃん遅いんで。普段30分で走る距離を一時間で走るのは、それはまたキツいもんですよ〜」
「う、うっさいわねェ!」

権城の煽りに対して紅緒は怒るが、しかし口で怒るだけなので、やはり相当参っているらしい。
いつもなら、権城がこんな生意気を言うと殴られているだろう。

「じゃ、お休みなさい
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