エピローグ
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を必死に堪える。
ただ、彼がいなくなってしまうのが嫌で。
懸命に、腕を伸ばしていた。
ただ、彼と一緒にいたくて。
遠ざかる彼の背中に、叫んでいた。
「拙者も……好きだから! タケル殿を誰よりも、世界で一番好きだから!! タケル殿に……タケルに帰ってくるつもりがなくても……拙者が……私がそれでも待ってるから!!」
――だから!!
いつの間にかタケルの背が止まっていた。だが、それに気付かないほど、楓は想いをただ紡ぐ。
「『ごめん』なんて……言わないで」
想いが胸から氾濫していく。せき止めていた涙が暴動を起こし、瞳から零れ落ちた。それが合図なってとめどなく零れ落ちる涙と嗚咽が、ただ小さく響く。
「……」
沈黙が、舞い降りた。
長い。
長い長い沈黙が流れて、そして再び彼は歩き出す。
「……」
誰もが諦めたその時。
楓の表情がさらに悲痛なソレへと変化を遂げたその時。
「……来る」
小さな言葉が、転がった。
「……え?」
「帰って来る」
言葉が――
「タケ……ル?」
「だから、泣かないでくれ」
――転がった。
楓はうれし泣きに崩れ落ち、木乃香と刹那がその背中に抱きつく。
エヴァンジェリンはどこかホッとした表情で「ふん」と呟き、茶々ゼロを頭に乗せて帰路に着こうとしていた。
オコジョになる期間が判明するのはまだきっと先のこと。
それは短くて数ヶ月長ければ数年に及ぶかもしれない。いや、事件の重要性を考えればもっと長いことだって考えられる。
彼が自分を死ぬと宣言していた意味は今でもわからない。
だが、それでも。
彼は絶対に帰ってくる。
彼は
約束したのだから。
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