エピローグ
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離を置く。
だが、恥ずかしがるのもお互いにそこまでだった。
タケルが楓の側を抜けてすれ違い、楓はそれを悲しそうにただ見つめる。
そして、階段を降りきったところに佇んでいた学園長とスーツ姿の男女一組と合流。
「……本当にこれで良いのか?」
「はい、俺が選んだ道です」
学園長もそのまま過ぎ去り、スーツの男女と向かい合う。
「では、大和猛さん。あなたは今回の超鈴音の事件についての最重要責任者として、本国へ強制送還されることになります」
「……」
男の言葉に、タケルはただ無言で頷く。ついで、女が口を開いた。
「それでは近衛 近右衛門どの。確かに身柄の引き受けを確認いたしました。あとは私どもにお任せください」
今更だが近衛 近右衛門とは学園長の名前だったりする。
タケルをいかにも犯罪人のように扱う女の言葉に、段上の幾人かが殺気まがいの怒りを放ったがそれだけ。
学園長は嘆息を吐き「うむ、宜しく頼む」
「「はっ」」
そして、2人がタケルの両側にたち、歩き出す。
「長瀬楓」
フと、エヴァンジェリンが楓に声をかけた。
「……エヴァンジェリン殿?」
怪訝そうな顔をする楓から顔を背け、言う。
「声をかけないでいいのか?」
「……何を言えばいいのか分からないでござるよ」
俯き、寂しそうに呟く彼女に、経験者は語る。
「分からなくてもいい。ただ、今の想いを告げてやれ」
――でないと、後悔するぞ?
かすかに漏れる悲しげなエヴァンジェリンの顔。辛そうに俯く小さな体。それが全てを物語っていた。
「っ」
はじかれたように顔をあげた楓がゆっくりと頷き、そして
「タケル殿!!」
切迫した声が響いた。
「……待ってるから……拙者が待ってるから……だから!!」
――帰ってきて!!
楓の声がタケルの足を止めた。タケルは振り返ることもなく、ただ淡々と。
「ごめん」
そして、また歩き出す。
小さな呟きに、楓が目を呆然と見開き、エヴァは目を伏せる。木乃香と刹那はどうすればいいのか分からずにオロオロとしている。
それでも、楓は諦めない。いや、諦められなかった。
――彼にお姫様抱っこをされた時のあの優しさ。
――彼との関係を周囲に勘違いされた時のあの恥ずかしさ。
――彼に追い掛け回された時のあの楽しさ。
――彼をお姫様抱っこして、初めて感じたあの温かさ。
――そして、彼に『好きだ』と言ってもらったときのあの嬉しさ。
全てが、楓にとっての大事な宝物だった。
こぼれそうになる涙
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