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新米提督お仕事日記
ご。
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ざけた軍事組織の最高機密。それが『艦娘』。……なんてファンタジーな響だ。そして現実なんだ。
 別に、男女の差別を考えた事などなかった。男であれ女であれ、軍人というものは国家守護の為にその身、その命を差し出すものなのだから。その道を己の意思で選んだ以上、そこに性的な線引きなどはない。ただ優秀かそうでないか、それだけの違い。軍人を軍人として定義するのはたったそれだけの差の筈だ。
 だが、これは。
『艦娘』とは、要約すれば人間を“兵器”として扱うモノだという。
 これはモラルや倫理、道徳を完全に欠いた、“選民思想”を捨て切れない上層意識の顕れではないのか……!
「まーだ懲りてないのかなぁ、上の人らはよぉ!」
 既に百年単位で昔の話。人間から脳を剥ぎ取り、残った肉体はサイボーグ化、脳は大型戦闘艦などのコンピュータに直移植させ、人工知能ならぬ人脳AIなんぞを作って戦争をしたと聞く。人間は最も安価な部品として製造されまくり、最終的には反乱を起こした人脳兵器たちに人類は滅ぼされかけた。その結果が今現在の私たちの時代だというのに。
 ……ズレた。話を戻そう。
 一応、理由はあるらしい。
 資料に記載されている説明によれば、彼女たちにしかあのバケモノを倒せないとかいう理由(詳細のどれもが現実味を欠いたものであり、目を通す事さえ苦痛になるようなものだ)らしいのだが、真偽を確かめる術を今の私は持ち合わせていない。だが実際目にした、電ちゃんが見せつけてくれた光景は、私の心を納得させるには十分な威力だった。とはいえ───
「……落ち着け。こういう時こそ落ち着け、私」
 ぐらぐらと煮え立つ頭に手の平を当て、そっと目を瞑る。怒りと絶望は時に前へ進む為の起爆剤になり得る。なら、それを利用しない手はない。問題があるとすれば、起爆剤は起爆剤でしかない事。方向は努めて冷静に、自分自身で決めなければ。
 数秒意識を外し、頃合いを見計らい、填める。
 呼吸に集中しながら立ち上がり、胸ポケットに仕舞ってあった電子ライターを作動させる。なんでこの時代に紙なんざ使ってるのかといえば、そういう事だ。データでは誰に知られるか分かったものじゃない、という考えなのだろう。どうも格式張っていて苦手ではあるが。
 資料の隅に着火する。瞬く間に燃え広がる火を、苦々しい思いでじっと見つめた。
「……バラしてやりたくても戻れないんじゃ、ね」
 用意も周到な事に。
 私の得た情報を島の外に報せる術は有り得ないようだった。
 ───最早、私に帰るべき場所は“無い”。
 これから先の私の人生は、すべてこの島の内部で完結するのだろう。
「やってくれやがったな、クソ共め」
 頭の痛くなるような、機密の嵐の最後に書かれていた一文はこうだ。

『尚、貴官の任務は戦争の終結、又は貴官の死を以っ
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