アカデミー編
黄昏
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さえ、ごろごろとその場で転がりだす。
嗅覚が良いキバには、そこそこどころか、相当きつかったのであろう。
カトナが投げたのは、くさやであった。
しかも、焼き立てである。
ここで、カトナを弁解する為に言わせてもらうならば、何もカトナは焼いたくさやをお弁当で持ってきたわけではない。くだらない嫌がらせで、ロッカーに焼く前のくさやが入っていたので、どうしようかと思いながら、今の今まで放っていただけなのだ。
そして、対戦相手のキバが嗅覚が優れていることを思い出し、このくさや爆弾を思いついたのである。
食べ物を無駄にすることはもったいないと思うが、このくさや、雑巾と一緒に入れられていたものなので、無駄にするとか無駄にしないとか以前の問題であった。
それでも、このくさやを作った人、ごめんなさいと、内心律義にカトナは頭を下げる。
ちょっとグロッキー状態に入っているキバを見てから、カトナはもう一つの袋を開ける。
その瞬間、凄まじい匂いが流れ出す。
くさやもなかなか強烈なにおいをしていたが、こちらはこちらでくらべものにならないほどに酷い匂いをしている。
カトナは顔を顰めつつも、牛乳に浸され、そのまま洗われなかった雑巾を投げる。
見事、顔に命中したそれに、キバが更に手足を振り乱してのたうちまわる。
うわぁと、観衆が風に乗って運ばれていくその匂いに顔をしかめる。
それでもなんとか、キバは必死な思いで上体を起き上がらせ、鼻を押さえながらも、ぼやける視界でカトナを見つけようとした。
その時、彼の視界に、なにかすごい速さで落ちてくるものが見えた。
なんだこれと彼が目を凝らそうとした瞬間、
彼の腹部に衝撃が襲った。
激痛。衝撃。キャインという声。
彼はぼやける視界の中で、何か白いものを見たような気がした。
束の間の沈黙が落ち、かくりと、キバの頭が落ちる。
カトナは地面に突き刺した大太刀を抜くと、んーと両腕を伸ばし、キバの腹部を見た。
そこには、先ほど上に投げた赤丸が目を回して、気絶していた。
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