第三部龍州戦役
幕間3 嗚呼、華の近衛衆兵鉄虎第五〇一大隊
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さて、当時の<皇国>における新城直衛の知名度はこの龍口湾の戦い以降に急速に高まったといって良いだろう。無論、北領からの生還、そして衝撃的な『奏上』と政界、軍部内における知名度は飛躍的に高まっていたが、あくまでも毀誉褒貶入り混じる“英雄部隊”の一士官として<皇国>の民草たちは認知していたのである。
さてとはいえど、新城直衛を英雄としてまつる者達の言葉、敗戦から不死鳥の如く蘇り、御国を支える護国の勇士、などと言った絵空事は英雄を語るそれの常と同じくまったくもって実際を知る者からすれば噴飯ものであった。
皇紀五百六十八年 七月十九日 午前第七刻 近衛衆兵鉄虎第五○一大隊本部
大隊首席幕僚 藤森弥之助大尉
「えぇ〜取り敢えずですね、初期に連絡がついた第五旅団の連中は無事についてきております。しかし、近衛総軍主力と合流するにしてもしないにしてもどっちにしろ酷く面倒な事になりそうですな」
「面倒でない敗北などない、とりわけ戦争ではな」
大隊長である新城直衛は常の様に無愛想に藤森に応える。
「――第三軍の先遣支隊はどうした?」
「とうに尻に帆をかけて逃げ出してますな。おそらくは龍兵飛来時に後退を始めたのでしょう。
騎兵の突撃のお蔭で師団司令部の連中も追撃する余裕はなかったようです」
「あいつ、逃げ足が速いのは昔からだな。それでも一応は役目を果たしたのだから性質が悪い。第三軍はどうしている?」
「主力は北上して近衛総軍の防衛線上に居る連中を叩いて転進するつもりの様です」
「まさしく転進、少なくともそう思わせるつもりか。度胸がある事だ」
第三軍を率いる西津中将はけして無能ではない、むしろ古典的な戦であれば果断な良将であることを示した。即座に逃げる前に叩くべき相手を叩くべし、と判断したのだから。
第三軍が容易く後方を衝き突破できる相手であり、なおかつ銃兵主力を投入した近衛総軍の撤退を助けるという一石二鳥の策であった。
無論、それを可能としたのは龍州軍が事前に予備隊の一部を回したことで集成第二軍がどうにか崩壊寸前であるが防衛線を保っていた事と、先遣支隊と事実上新城が率いる近衛集団が本営と師団司令部と上級司令部をすべて封殺し、指揮系統を完全に崩壊させることに成功していたからである――だが今回の話には直接的には関わらない事である。
――閑話休題――
「まぁそれはそれとして、これじゃあ南方からって迂回ってのはちょいと無理がありますな。
負傷した美倉閣下と供回りだけなら龍州軍経由で後送できますが、部隊での行動となると遠回り過ぎて逆に騎兵どもにつかまるやもしれません」
五○一大隊も第五旅団も砲兵隊や後方支援担当部隊は総軍司令部直轄として置いてきた。近衛がいち早く後退して再編するのなら
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