しん・最終話「ネギまとガンツと俺」
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ル殿?」
「好ぎ……だ」
潰れかけた喉がもどかしい。
「――っ!?」
真っ赤に染まるその愛らしさ、まるで姫。
感じ入っていた。
「しゃ……しゃべってはいけないでござるよ!」
慌てて落ち着こうとする彼女は、本当に女の子で。赤ん坊のように何でも言うことをききたくなる。
だが。
今、彼女の言う通りに黙るわけにはいかない。
今、話さなければならない。
もう――
――俺には今しかないのだから。
「だれ……よ……り゛」
喉が潰れても構わない。
肝心な言葉を紡がせない喉などいらない。
「……も……ぎみ゛」
肺に折れた骨が刺さっても構わない。
真に必要な時に呼吸させない肺などこっちから願い下げだ。
「……を゛……がえ゛で……を゛」
引きつって自由の利かない横隔膜など千切れても構わない。
こんな時に邪魔する筋肉などむしろ引きちぎってやる。
大きく息を吸い込んだ。体内の全てが悲鳴を上げる。
――うるさい、黙れ。
それでも収まらない悲鳴を無視して、口を開く。
「……ずぎだ」
「た……タケル殿!!」
流石に黙らせるためか、口を押さえようと出てきた楓の手。残った左手でそれを掴み、さらに。
「どんな誰よりもどこのどいつよりも世界中のなによりもキミが思うよりもずっとずっとずっとずっと楓が好きだまだ会って数ヶ月だがそれでも俺は愛している絶対に愛している世界で一番誰よりも愛してる死んでも絶対――」
一度言葉を区切り、深呼吸。
そして。
「――好きだ、楓」
「え……あ……い……う……」
流石に、俺の体。
喉も、肺も、全てが壊れかけている体だったがイザという時は素直に動いてくれた。全てを言い切った。これでもう思い残すことはない。
未だに派手な打ち合いをしているエヴァと星人に目を向ける。
――あれだけ、気を引いてくれるなら。
モジモジと困っている誰よりも可愛い楓に、だから。
俺は言う。
「むき……を゛……」
――変えてくれ。
と言ったつもりだが声が出ない。どうやらさっきのせいで完全に喉が潰れたらしい。だがそれでも理解してくれるのが彼女。
「向きを? いや、しかしこのか殿のところに行かなければ」
――必要ない。
「必要ない? そんなはずが!? ――」
――ここまで助けてもらっておいて何だが、助けはいらない。
「……え?」
――俺は奴らを殺し、だから奴らは俺を殺す。奴らは俺を殺し、だから俺は奴らを殺す。殺す理由も殺される理由もただそれだけ。俺と奴らにはそれだけで十分……だから。
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