第四章 誓約の水精霊
第二話 メッキの王冠
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し、折角だからもっといいものを買えば?」
「まあ、そうなんだがな」
ルイズの言葉に曖昧に頷きながら、士郎は一着の服を手に取り見つめる。
服を手に取り見つめる士郎に、この露店の店主だと思われる者が声を掛けてくる。
「お客さん、御目がたけえな。そりゃあ、アルビオンの水兵の服でさ。今なら安く提供するぜ」
店主の声に、士郎は内心で頷く。
水兵服か……そう言えば、あの服も元は水兵服だと言う話しだが。
水兵服を持ち上げ、何となく懐かしい気持ちになっていた士郎の脳裏に、とある服を清楚に着こなすシエスタの姿だけでなく、胸元を大胆に開けたキュルケの姿や、手が服から出ていないだぼだぼ姿のルイズ、そして……どこかいけない気持ちにさせる、とある服を着たロングビルの姿が浮かび、我知らず服を握る手に力が入った。
無意識の内に士郎は店主に尋ねる。
「いくらだ?」
声は湧き上がる何かを押さえ込むかのように、低く重く響いた。
「は、はい。さ、三着で、一エキューで結構でさ」
「なら三エキュー払う。九着もらうぞ」
士郎の奇妙な迫力に押された商人に三エキューを支払った士郎は、うず高く積まれていた水兵の服の中から、九着を選び取り出した。
中古の水兵の服を買う士郎の姿を、ルイズが呆れた顔で見ている。
自分なら、お金をもらってもいらないものを、士郎が言い値で、しかも九着も買っている。しかも、制服を握る士郎の顔は何故か満足気であった……。
あれから、さらにいくつか買い物をした士郎たちは、両手に荷物を抱えた姿で寮の部屋に戻ると、ルイズはベッドに腰を掛け、手に持つ始祖の祈祷書を広げた。鼻歌混じりに始祖の祈祷書を読むルイズの様子を横目に見ながら、士郎は手に持った荷物を床に置き、仕分けを始める。
しばらくそのまま時間が過ぎていると、唐突にルイズが士郎に話し掛けた。
「そう言えばシロウ」
「ん? 何だ?」
「それ、どうするの?」
ルイズが指差すのは、士郎が買った水兵の服。
士郎はん〜、と天井を仰ぐと、ニヤリとルイズに笑いかけた。
「秘密だ……まあ、もう暫らく待っていてくれ」
「? まあ、いいけど」
納得がいかないという顔をしながらも、ルイズは頷くと、「そうそうそう言えば」と話しを続ける。
「もしかしてシロウって……わたしが虚無の使い手だって知ってた?」
「ふむ……まあ、な」
「むぅ……何で教えてくれなかったのよぉ」
ぶすっと頬を膨らませ、睨みつけてくるルイズに、苦笑を返す。
「理由は、ルイズ自身が言っただろう」
「えっ? わたしが言った? いつ? どこで?」
困惑した表情を
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