第四章 誓約の水精霊
第二話 メッキの王冠
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る。
「あり、ありが、とう……ルイズ」
アンリエッタの腕がゆっくりとルイズの身体に回される。
「わたくしの……お友達」
「これを渡します。あらゆる場所への通行、警察権を含む公的機関の使用を認めた許可証です。……これからは、あなたはわたくしの直属の女官ということになります」
アンリエッタから恭しく許可証を受けとったルイズは、それを大事そうに両手で抱きしめる。
その様子をどこか複雑な顔で見るアンリエッタは、同じように複雑な顔をしてルイズを見つめる士郎に声を掛けた。
「シロウさん。これからもどうぞルイズを……わたくしの大切なお友達をお願いいたします」
「はい」
首を微かに頷き応える士郎に、ふっ、と綻んだ笑みを見せると、机に向かって歩き出した。机の上に置かれていた白い袋を手に取ると、それを士郎の手に握らせる。
「あなたの成した戦果に対し、何も報いることが出来ませんが……せめてこれだけでも受け取って下さい」
士郎が袋の中身を確認すると、中にはぎっしりと金銀宝石の他に、金貨が詰まっていた。
頭をがりがりと掻きながら、士郎は袋をポケットに入れ笑いかける。
「ありがたく受け取らせてもらいます」
優しい……優しく柔らかい士郎の笑みに、アンリエッタも思わず笑みを返してしまう。
ルイズたちが去り、一人部屋に残ったアンリエッタは、広いベッドの上に腰を掛け目を閉じると、先程の士郎の笑みを思い出していた。
金貨や宝石が詰め込まれた袋の中身を見ても、全く目の色を変えなかったルイズの使い魔――エミヤシロウ。
向けられた笑顔は、とても……とても優しい笑みだった。……見ていると、こちらも思わず笑みが零れてしまうほどに……。
金貨や宝石に全く興味を示さなかった彼が、何も言わず受け取ってくれたのは、自分を気遣ったくれたものだと理解していた。
「不思議な……人……です、ね」
自身の顔に、自然と笑みが浮かんでいることに、アンリエッタは気付かなかった。
王宮を出た士郎とルイズは、屋台や露天、様々な見世物が出て、お祭り騒ぎの様子を呈する城下街を、見て回っていた。地方領主の娘であるルイズには、見るもの全てが珍しいのか、子供のようにうきうきとしながら出店を覗き込んでいる。
「シロウシロウっあれは何? 何?」
「ん? あれか、あれはな――」
ルイズは士郎の外套の端を掴むと、あちこちの露店に入るとアレは何? コレは何? と士郎に笑い掛けながら尋ねている。
そんな幼い子供の様なルイズの後ろを、笑みを浮かべながら士郎はついていく。
足を止めることなく、様々な露店に顔を出していたルイズだったが、一つの
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