第四章 誓約の水精霊
第二話 メッキの王冠
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あの時のことを……。『水のルビー』を持った手で始祖の祈祷書のページに触れると、虚無の呪文が浮かび上がったこと。それを読み上げると光が現れ、艦隊を壊滅させたこと。
「姫さま……わたしは『虚無』の担い手なのですか?」
不安気に問いかけるルイズ。アンリエッタはルイズを安心させるよう優しく笑うと、ルイズの肩に手を置いた。
「ええ。あなたは『虚無』の使い手です。ご存知でしょう。始祖ブリミルは、自身の三人の子に王家を作らせると、それぞれに指輪と秘宝を遺したことを。このトリステインに伝わるものが、今、あなたが嵌めている『水のルビー』と『始祖の祈祷書』です」
「……はい」
「王家には、このような言い伝えがあります。『始祖の力を受け継ぐものは、王家に現れる』と」
「えっ? で、でもわたしは、王族じゃ」
「ラ・ヴァリエール公爵家の祖は、王の庶子です。あなたはトリステイン王家の血を引いているのですよ」
そして、チラリと士郎の手を見る。
「シロウさんの手にある印は、『ガンダールヴ』ですか?」
士郎は無言で頷く。
士郎が頷くのを見たアンリエッタは、軽く俯くと、ルイズに硬い表情が浮かんだ顔を向ける。
「これで、あなた達に戦果に対する報酬を与えられない理由は分かりましたね」
「わたしの力を狙って、争いが起きるから。ですか?」
俯き呟くように応えるルイズ。
それに言葉短く応えるアンリエッタ。
「その通りですルイズ。あなたの力を知られれば、敵はなんとしてでもあなたを手に入れようとします……それだけでなく、この城の中の者さえ……あなたを手に入れようとする者が必ずやいるでしょう」
アンリエッタは俯いたまま顔を上げようとしないルイズに近寄ると、その頬に優しく触れる。
「ですからルイズ。その力はわたくし達だけの秘密です」
頬に触れる手に自身の手を重ねると、ゆっくりとルイズは顔を上げ頷く。
「分かりました姫さま。……ですが一つお願いがあります」
重ねた手を強く握り締めたルイズは、決意を秘めた瞳でアンリエッタを見つめた。その強い光を秘めたルイズの目を見たアンリエッタは、思わず息を飲んだ。
「ッ……お願いとは?」
「わたしの虚無の力……姫さまのために使わせてください」
「なっ!? ……何を言っているのですかルイズ。そんなこと出来るわけないでしょう」
ルイズの言葉に目を見開いたアンリエッタは、先程のルイズと同じように顔を俯かせた。
ルイズは両手でアンリエッタの顔を包むと、自身の顔と向き合わせる。
「先程言ってくれましたよね。わたしが姫さまのお友達と……なら、困っているお友達の力に成らせてください」
ルイズの言葉に、アンリエッタの瞳が潤む。
声が震え
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