第四章 誓約の水精霊
第二話 メッキの王冠
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まずい雰囲気にはならなかった。
いくら友人だからとは言え、今のアンリエッタは女王だ。一介の学生と話しをする時間などないはずだ。
……本当にただの一介の学生だったなら、だけれど。
「それで、姫さまがわたしをお呼になった理由とは?」
「そうね……ルイズも薄々気付いているかもしれませんが……まずはこれを」
そう言ってアンリエッタは、手に持った羊皮紙の報告書をルイズに手渡した。
「あの勝利の本当の功労者に対し、いくつかお聞きしたいことがあります」
報告書を読み終え、顔を上げたルイズに向かい、アンリエッタが声を掛けると、ルイズは小さく、長く息を吐きだした。
「ふぅ〜……、ここまで、お調べになったんですね」
「まあ、あれだけ派手な戦果あげて、分からないと思っていたの?」
くすくすと小さく笑ったアンリエッタは、そこで今の今まで黙ってルイズたちのやり取りを眺めていた士郎に顔を向ける。アンリエッタを見つめる士郎の目には、労わるような優しさと、悲しみが入り混じり、複雑な輝きを魅せていた。
強いて言うならばマザリーニが向ける目と似ているが、ハッキリと違うと言い切れる何かが、その目にはあった。今まで見たことがない、その不思議な瞳に、思わず息を飲むアンリエッタだが、一つ左右に首を振ると、士郎に話し掛けた。
「あれに乗り、レコン・キスタの竜騎士隊を壊滅させた聞きました。御礼を申し上げるのが遅れ、申し訳ありませんでした」
「謝るようなことではありません」
「あなたはこの国を救ったのです。……本当でしたら、あなたを貴族にして差し上げたかったのですが」
「いえっ、そのようなことは」
士郎が断りの声を上げようとしたが、それよりも早くアンリエッタが声を上げる。
「しかし、あなたに爵位を授けるわけには参りません」
アンリエッタがキッパリと言い切るが、士郎には何とも思わなかった。反対に助かっていた。爵位だのなんだのに何ら魅力も感じないし、もらったとしても貴族社会が自分に合うはずもなく、ただ困るだけだ。
「あなた達の成した戦果は、長いトリステインの歴史の中でも類を見ない程の戦果です。本来ならば小国の一つでも与えたとしても良いくらいですが……与えられない理由があります」
そこまで言うと、アンリエッタはルイズを見つめ直し、口を開く。
「艦隊を壊滅させたあの光は……あなたですねルイズ」
何かを確信した物言いでアンリエッタは言う。ルイズが不安気に士郎に振り返ると、士郎は一度目を瞑り眉間に皺を寄せると、小さく息を吐くと共に目を開けた。
「ルイズ……君が選べ」
士郎の言葉に、ルイズは小さく頷くとアンリエッタの顔を見る。
「実は――」
そしてルイズは語る。
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