第四章 誓約の水精霊
第二話 メッキの王冠
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キラキラと言うよりも、ギラギラと輝きそうな様々な家具に囲まれた広々とした豪華な一室の中、男が金箔と宝石で豪奢に飾り付けられた椅子の上に座っている。
男の名は、オリヴァー・クロムウェル……神聖アルビオン共和国の初代皇帝である。
クロムウェルが座っている椅子とセットなのか、同じように金箔と宝石で複雑な模様が描かれた机の上には、一本のロウソクが立てられ、周囲を朧げに照らしていた。
しっかりと造りこまれた椅子の背に、ギシリ、と身体を預け、天井を仰ぐクロムウェル。
「どうする、どうする……くそっ! ただの世間知らずの子供だと思っていたのに。クソクソクソっ! 生意気にも抗うとは……ッ」
「随分と悩んでいるようだな」
「っ!」
突如背後から声を掛けられ、ゴロゴロと椅子から転がり落ちるクロムウェル。
慌てて背後を振り返ると、目の前には深いローブを被った女性がいた。ローブを深く被っているため、表情は伺えないが、クロムウェルは女が誰か知っていた。
女の名はシェフィールド――周囲からクロムウェルの秘書と言われている女である。
クロムウェルは慌てて立ち上がると、シェフィールドに向かい……頭を下げた。
神聖アルビオン共和国の初代皇帝であるはずの男が、ローブを被った地味な女に対し頭を下げる。
この場にアルビオンの貴族がいれば、自分の目を疑っていたことだろう。
「すすす、すみませんっ! ど、どうかご容赦くださいませっ! つ、次こそは必ずやトリス――」
「五月蝿い」
「ひっ」
頭を下げ、必死に女に謝罪するクロムウェル。シェフィールドはそんな必死に言い訳をするクロムウェルを一瞥すると、侮蔑を含んだ言葉を吐き捨てる。
まるで、母に叱られた子供のように身体をびくつかせながら、クロムウェルは恐る恐ると顔を上げる。
「あ、あの小娘は、今や『聖女』と崇められ、間もなく女王に即位するという話しです」
「それで」
「王国にとって王とは国です。な、ならば女王さえ手に入れれば、トリステインを手に入れたことと同義です」
「つまり、どうすると?」
腰を曲げたままクロムウェルは、その歪んだ笑みを浮かべた顔で、シェフィールドを見上げた。
「ウェールズを使います」
「ふん」
シェフィールドが首を部屋の隅に向ける。机に立てられた一本のロウソクでは、部屋の隅まで照らし出すことは出来ない。
クロムウェルは立ち上がり身体を伸ばすと、手を叩きウェールズに呼びかける。
「ウェールズこっちに来い」
「お呼びですか。閣下」
「お前の恋人の『聖女』を、我が城、ロンディニウムに連れて来い」
「分かりました」
目を血走らせ、ウェールズに指を突きつけ命令するクロムウェル。クロムウェルの言っていることを理解して
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