プロローグ
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「7-c-v でチェックメイトだ」
男は言う。
「........」
無言のままに手詰まりとなったチェス盤を覗く。
「惜しかったな。でも、前よりもいい打ち方になってるよ」
柔和な笑顔で笑いかけているが、作り笑顔であるのは明らかだ。
自分の怒りを表すように音を立て立ち上がる。海に近いこのオープンテラスの喫茶店は、早朝であるからか客は自分達だけのようだ。
「なんで、あんたはこんな依頼をする。チェスがしたいなら他の奴にしてくれ。」
そう、この男からチェスの相手を頼まれる依頼はこれが初めてではない。二ヶ月ほど前から度々依頼と称してチェスの相手を頼まれる。
何度か会ってわかったことが男は、何か普通とは違うカリスマ性を感じさせる雰囲気を醸し出していた。
「いいじゃないか、この依頼だけでかなり評価を稼げるのだから。武貞校の少年」
「そんな呼び方やめろ、前に名乗ったろ。」
「ははは、そうだね。久永 夢夜くん」
そう、実際のところこの男からの依頼は、武貞の評価として、Bランク程の評価をもらえる。
「まあ、いい。じゃ、学校が始まるからいくぞ。」
財布から料金を取り出しテーブルに置く。脇に立て掛けておいたカバンに手をかける。
「ああ、すまない。時間をとらせたね。」
男も立ち上がり立て掛けておいた杖と、帽子を手に取り身につける。
俺はゆっくりと神奈川武貞校に足を向け、歩き出す。
「言い忘れたことがあった。今日、誰かが困っていたら助けてあげなさい。」
後ろから声が聞こえる。振り向いた方が良いだろうか。
「別に振り向かなくていいよ。もう一つ、今日一日、桃色には近づかない方がいいよ。」
言っていることが、意味不明だったが、軽く手をあげ返すことにした。
喫茶店からでて海沿いに歩く。この道を真っ直ぐ進むと武貞校第二グラウンド辺りに着く。いつもは、寮からバス登校だが、たまにはこんな登校もいいかもしれない。
店をでた時間もちょうどよくゆっくり歩いても充分間に合う。海の近くもあってカモメの鳴き声が聞こえる。
同じ寮室の生徒も今度誘おうなど頭に浮かんでくる。今頃、幼馴染が
起こしに来ているのだろう。自分がいれば気を使わせてしまうのもあって彼よりも早く出るのはもう日課だ。
そんなことを考えていると、ふと男が言っていたことを思い出した。
道の中復ちょうど、道が交わるT字路だ。
「困っているひとを助けろか、そうそういるもんじゃないだろ。」
そう呟く。と側面から衝撃をうけた。走っていたのだろう。なかなかの力で押し倒される。
「え!?」
「あ!?」
大きく柔らかい物体が顔を埋める。
「!!!」
「ひゃう」
「!!!!!」
「ダメです。くすぐったいです。」
なんとかどいてもらおうとしているが相手も相手でうまく立ち上がれないようだ。
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