第百七十二話 戦を振り返りその七
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「今は激しい戦じゃが」
「その中でもな」
「あの一騎打ちは違う」
「壮絶じゃ」
「凄い闘いじゃぞ」
幸村も慶次もお互いに引かない、まさに五分と五分だった。
一騎打ちは終わることもなく続く、その中でだった。
慶次は槍を大きく振り下ろした、だがその一撃を。
幸村は二本の槍を交差させその間で受けた、それで絡め取ろうとするが。
慶次は槍を素早く引き抜いた、それで今度は突きを幾度も繰り出してきた。
しかし幸村はそれを彼の双槍で受ける、やはりお互い一歩も引かない。
そうした戦が続く、二百合どころかさらに打ち合うがそれでもだった。
両者の一騎打ちは続いた、だが戦はその間にも進んでいく。それで遂に信玄が信濃に引き上げることを言ってだった。
幸村も引き揚げる、慶次は追おうとしなかった。悠然と馬上にあって言うのだった。
「幸村殿、また楽しもうぞ」
「一騎打ちで、ですな」
「左様、貴殿との勝負実に楽しかった」
それでだというのだ。
「また手合わせを願おう」
「それでは」
こう話して慶次と別れ今ここにいるのだ、そして。
十勇士達と話していた、それで言うのだった。
「思えばこの戦は凄いものだった」
「はい、徳川織田とそれぞれ戦いました」
「大きな戦でしたな」
「織田は倒せなかった、だが」
「だが、ですな」
「それでもですな」
「次がある」
次の戦、それがだというのだ。
「だからな」
「気を落とさずにですな」
「一旦甲斐に戻ってですな」
「上野に帰ろうぞ」
真田の領地のそこにだというのだ。
「そうしようぞ」
「さて、上野に戻れば」
どうするかとだ、穴山が笑って話した。
「また野良仕事に修行ですな」
「うむ、励むぞ」
「そうしようぞ」
十勇士の他の者達も穴山の言葉に笑って応える。
「野良仕事もいいのう」
「美味い野菜が出来る」
「それを食えば力がつく」
「よいことじゃ」
「そうじゃ、わしも野良仕事は好きじゃ」
幸村も笑って言う、彼は今も自ら野良仕事に励んでいる。政に鍛錬に学問にそれにも励んでいるのである。
「あれは実によい」
「土に塗れてですな」
「そうして働くことも」
「そうじゃ、では甲斐に戻ってからじゃ」
上野に戻ろうと話す彼等だった、武田は織田との戦を終えて甲斐まで悠然と戻っていた。それは秋山が率いていた岩村攻めの者達も同じだった。
信玄からの文を受けてだ、秋山は己が率いている者達に言った。
「殿から退けとの命じゃ」
「そして甲斐に戻れと」
「そうせよというのですか」
「国境のことは木曽殿にお任せしてな」
そのうえでだというのだ。
「我等はな」
「木曽路から甲斐に戻れと」
「そうじゃ、では戻るぞ」
秋山はあっさり
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