第三幕その五
[1/2]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
「あの人の代表作ですね」
「その舞台でもありまして」
「秋山真之の」
「いや、お詳しい」
加藤さんはうどんをすする手と口を止めてです、先生に感嘆の言葉を漏らしました。
「秋山真之のことまでご存知とは」
「あの人はここの出身でしたね」
「はい、愛媛の」
「この街は本当に歴史に文学に縁がありますね」
「それがそのまま観光になっていまして」
それで、というのです。
「今の松山があります」
「坊ちゃんと温泉の他にもですね」
「そうです。後は」
「後は?」
「このことはあまり知られていないことですが」
この前置きからお話する加藤さんでした、あることについて。
「松山の人の中でもかなり古くから、代々住んでいる人しか知らないことです」
「どういったお話ですか?」
「実はこの松山には狸がいまして」
「狸ですか」
「はい、伊予の狸達の総大将がいるのです」
先生にです、加藤さんはこっそりとこのこともお話するのでした。
「愛媛の」
「そういえば四国は」
「はい、狸と猿が有名ですね」
「あと犬もですね」
「高知の土佐犬ですね」
「闘犬に使われている大きな犬ですね」
「そうです、四国ではそうした生きものが知られていますが」
その動物達の中でもというのです。
「狸はです」
「四国には狸のお話が多いのですね」
「讃岐、香川の方の団三郎狸が有名ですが」
「この松山にもですか」
「四国のそれぞれに狸の総大将がいまして」
そしてだというのです。
「愛媛の総大将はこの松山にいるのです」
「そうだったのですか」
「はい、名前は仁左衛門といいまして」
「歌舞伎役者の名前ですね」
「何でも初代片岡仁左衛門と親交があったらしく」
加藤さんはその狸の総大将の名前の由来もお話します。
「大阪の方に度々行っていたとのことで」
「片岡仁左衛門は上方歌舞伎の家ですからね」
「そうです、それでなのです」
「初代の片岡仁左衛門さんと親交があり」
「以前は左吉といったそうですが」
「仁左衛門に名前を変えたのですね」
「それがこの愛媛の狸の総大将です」
松山にいるその狸だというのです。
「その狸がこの松山にいます」
「それは面白いことですね」
「本当にあまり知られていないことですが」
松山に代々古くから住んでいる人達しか知らないことだというのです。
「そうしたお話もあります」
「加藤さんはその仁左衛門さんとは」
「合ったことはありません」
このことについては残念そうに答えた加藤さんでした。
「私はお話に聞いただけで」
「そうですか」
「一度お会いしたいと思っていますが」
それでもだというのです。
「中々そうはいきません」
「愛媛の狸の総大将ともなるとですか」
「しかも相当
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ