第三幕その一
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第三幕 お仕事の後で
先生の論文の発表は午前中に行われました、先生は自分で論文の説明もしました。その論文の発表を聞いてです。
集まった学者の人達は唸ってです、こう言うのでした。
「そのやり方があったんだね」
「経験論か」
「経験から深めていく」
「ただ闇雲に学ぶのではなく」
「経験だね」
「そこから深めていく研究か」
「そういうのがあるとはね」
先生はイギリスから来た人です、イギリスの医学はジェンナーという人がそうでしたが経験論が強いのです。それで先生もなのでした。
「そこから学んでいく」
「ドリトル先生はそうしたスタンスなんだね」
「しかしそれがいいね」
「うん、斬新だよ」
「研究内容もいいし」
「しかも日本語は堪能だし」
「見事な人だね」
「いい人が日本に来てくれたね」
「イギリスからね」
皆日本でははじめて発表された先生の論文を高く評価するのでした。ただ先生ご自身についてはこう言うのでした。
「けれど外見はね」
「ごく普通の人だね」
「偉そうでもないし」
「むしろ穏やかでね」
それでなのでした。
「優しい感じで」
「喋り方も温厚でね」
「いい人みたいだね」
「親しみやすい感じだよ」
「そうだね」
こうお話するのでした、先生については。
「論文は見事でね」
「少しも偉そうじゃない」
「腰は低いし」
「人間的にもいい人みたいだね」
「あの人ならね」
「じっくりとお話出来そうだし」
「よかったよ」
先生ご自身も論文とは違った基準で評判になっていました。加藤さんはお昼御飯の時に先生に一緒に食べながらお話をしました。
「先生、評判いいですよ」
「あっ、そうなのですか」
「はい、とても」
「そうですか、それは何よりですね」
先生は加藤さんの言葉ににこりと笑って応えました。
「やっぱり僕にしましても」
「評判がいい方がですよね」
「有り難いです」
こう言うのでした。
「嫌われるよりはずっと」
「そうですよね。穏やかな方だと」
「少なくとも僕は怒ったりすることはです」
「お嫌いですか」
「怒鳴ったりすることはです」
そうしたことはというのです。
「どうしても出来なくて」
「だからですね」
「穏やかに思われるのだと思います」
「そうですか。ですが私の見たところ」
先生はどうかとです、加藤さんは先生にお話しました。
「先生は実際にです」
「穏やかですか」
「はい、とても」
先生はそうした人だというのです。
「紳士だと思います」
「だといいのですが」
「しかも偏見がなく公平な」
「人種的な、ですね」
「そう思います」
「そうであれば本当に有り難いです」
「こうして今一緒にいまして
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