秋山 駿
第一章 崩壊する生活
第三話 謎の男
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けないよ」
秋山の言葉にに、男は小さく笑う。
振り返らずとも、他人を馬鹿にして嘲笑っている顔が目に浮かぶ。
どう切り抜けるかを考えていた矢先の事。
一瞬、秋山の視界が奪われた。
男はできたばかりの水溜りを蹴り上げ、それが秋山の目に飛び込んできたのだ。
不意を突かれかわす事が出来ず、顔にかかった水を急いで拭う。
「遅い!!」
秋山の視界が戻る頃には、寸前の所まで拳が飛んできていた。
慌てて仰け反りそれをかわすと、その勢いで男の脇腹に得意の足技をお見舞いする。
だが蹴りを食らってもなお表情は、何ひとつ変わらない。
その姿に躊躇する間もなく脇腹に伸びた足を掴まれ、動けなくなった秋山の腹へお返しとばかりに一発殴りかかる。
「ーーーっがぁ……!!」
その拳はあまりにも重く、胃液が逆流する感覚が身体中を這う。
何とか押し留め呑み込むと、今度は痛みが波のように押し寄せてきた。
たった1撃で意識を根こそぎ持っていかれそうになるのを何とか堪えたが、次に同じものを食らえば今度こそ気絶する自信がある。
だ次の攻撃が飛んでくることもなく掴まれていた足が解放され、力無く地面に突っ伏した秋山は顔を僅かに動かす程度にしか動けなかった。
その様子を、男は満足気に見下ろしている。
「やっぱり、ただの堅気じゃなさそうだな。何者だ?」
「……ただの……金貸し、ですよ……」
「へぇ、金貸し。それは悪いことしたな」
再び秋山に背を向けた男が、ケタケタと笑いながら去ろうとする。
だが何かを思い出し、その歩みを止めた。
「あーそうだ。覚えてもらわなくてもいいけど、俺は東城会直系喜瀬組組長、喜瀬晃司。アンタとは、また会えそうな気がする」
喜瀬と名乗ったそのバンダナ男は、そのまま屋上を後にした。
雨足が強い雨に1人打たれながらも動けずにいる秋山は、ポツリと言葉を漏らす。
「東城会、喜瀬組。ははっ、ヤクザ相手に何とかなるなんて思ってた俺が馬鹿だった……」
自虐的に笑みを浮かべるも、しばらくその場で動くことが出来なかった。
ようやく動けるようになった頃にはすっかり雨は止み、雲間から虹が姿を見せていた。
「社長!?」
事務所に帰ってきた秋山を見て、事務作業をしていた花ちゃんが悲鳴をあげた。
全身びしょ濡れで泥まみれの姿に、花ちゃんは慌てて事務所の奥からタオルを引っ張り出してくる。
秋山はふらふらとした足取りでソファーへと向かおうとするも、痛みのあまりその場に座り込んでしまった。
頭にタオルがかけられたかと思えば、少し痛い程しっかり拭きあげられる。
「社長!何があったんですか!?」
「は、
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