A's編
第三十二話 前
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小学生の身分でこの世界に呼ばれたのだから、多少は目をつむってほしいものである。
―――閑話休題。
シグナムさんの確認に僕たちは全員がコクリとうなずく。基本的な陣形は変わらないものの今回は異常繁殖と異常変種という二つの原因を取り除かなければならない。ゆえに、早々に決着をつけて群れを瓦解させるわけにはいかないのだ。ある程度間引きしてから異常変種をおびき出す必要がある。
つまり、苦戦しているように見せかけながら、異常変種を森野の奥から引きずり出す必要があるのだ。
なので、今回はヴィータちゃんとシグナムさんが得意としている突貫による陣形崩しは使えなくなった。むしろ、ザフィーラさんのような敵のつり上げが必要となるだろう。今回はその確認だった。
「ならばいい。全員、準備は念入りにな」
戦場では一つの油断が、死へと直結する。それを最初に教えてくれたのはシグナムさんだ。今まで戦場に立ってきた人の言葉だ、従っておくべきだろう。
僕はまだ死にたくないのだから。
◇ ◇ ◇
夜―――僕は、目を覚ましてしまい、馬車の外へと出てきていた。本来、夜に一人で出歩くのは危険なのだが、馬車の周囲にはシャマルさんとザフィーラさんの結界が張ってあるため、基本的には安心だ。もっとも、曰く、シグナムさんもヴィータちゃんもザフィーラさんも街の中でもない限り熟睡はしないので、異変があればすぐに気付くと言っていた。僕が外に出ていることももしかしたら気付いているかもしれない。
それでも何も言わないのは、先ほど言ったようにザフィーラさんたちの結界もあるからだろう。
僕は、馬車から少し離れたところで、空を見上げていた。
空には満天の星空。ただし、地球とは異なり衛星―――月はないようだった。照らし出すのは星空ばかり。しかも、空気が澄んでおり、周りに光がないせいか、地球では見えないような星さえも見える。
「―――主、どうされたのですか?」
不意に僕の耳に届く女性の声。振り返ってみると夜と同化するような黒い服に夜とコントラストを彩るように白銀の髪をなびかせながら僕の聖剣の精霊が顕現した姿で現れていた。
「……ちょっとね、眠れなくて」
「昼間のことですか?」
さすが、というべきだろうか。いや、誰だって知っていることかもしれない。
昼間―――当然、リガルド討伐のことである。
僕が前世の記憶を持っていたとしても、それでも平和な日本で学生をやっていた男にすぎないのだ。このようなファンタジーはややつらいところがある。相手は魔物と言えども剣を通して感じる肉を断ち切る感触は変わらないし、命を絶つということに対して忌避感を持つのも変わらない。常識が異なる、郷に入っては郷
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