A's編
第三十二話 前
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ろう。
僕がこの世界―――僕の世界とは異なる世界に来ることになった詳細は省略でもいいと思う。あれは何と言っただろうか、いわゆるお約束が並んだことだから。つまり、この世界には魔王がいて、近々復活しそうな気配があるから、聖剣に選ばれた君が倒してよ、というわけだ。
そして、当然のことながら一人で魔王退治なんて不可能なので、仲間が付けられた。もちろん、軍勢などではなく少数精鋭の面々だが。
僕はなんとなく確認するように僕の旅の仲間たちを見渡した。
早速、すごい勢いでスープを飲み始めたのは、今朝の水浴びから帰ってきてまだ髪が乾いていないのだろうか、しっとりと濡れた赤い髪をもつヴィータちゃんだった。彼女は、この世界の教会という組織の神官騎士である。彼女の武器はハンマー。シグナムさんと並ぶ特攻隊長である。どうやら、この世界の教義では、殺生を許していないようで、教会を世俗の悪から守る神官騎士は、基本的に鈍器が主な武器になるらしい。ちなみに、彼女の身長は僕たちと同じぐらいではあるのだが、年齢は16歳というから驚きだ。本人はとても気にしているらしく、いうと怒られるのだが。だったら、せめてそんながっついたような食べ方はやめればいいと思うのだが。
そんなヴィータちゃんを見守るような慈母の眼差しで見守るのが、僕たちの料理人であるシャマルさんである。シャマルさんは、法衣のようなゆったりとした服を着ている。その実、彼女はヴィータちゃんと同じく教会の神官である。神官騎士は、教義をけがす者たちの討伐だが、シャマルさんは教義を広める神官である。シャマルさんは、戦うという点で見れば、戦力にはならないが、神の力を借りたとされる魔法で怪我の治療や防御力の増強をしてくれている。
シャマルさんとは逆にあきれたような表情で見ているのは、僕を起こしに来てくれたシグナムさんだ。赤を少し薄くしたようなピンクと形容すべき髪をポニーテイルにした僕たちの仲間の中で単体戦力だけで言うと一番の戦力である。シグナムさんが所属しているのは、僕を召喚した王国の第一騎士団であり、シグナムさんは騎士団の副団長だったらしい。だが、今回の旅で引き抜かれたようだ。そこには、男女の確執やらいろいろあったらしいが、僕は知るべきではないのだろう。
シャマルさんやシグナムさんのように微笑ましいような表情もせず、あきれもせず淡々と自分の食事に集中しているのは、青い毛並みの耳と尻尾を持った獣人族のザフィーラさんだった。実は、彼だけは僕を召喚した王国とは無関係の武者修行としている武人だった。僕たちと一緒に旅している原因は紆余曲折あるのだけど、今ではすっかり僕たちの旅の仲間の一人だった。
そんな風に見守られているとはつゆ知らずスープを飲むヴィータちゃんの隣で、姉妹のようにスープを飲むショート
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