A's編
第三十二話 前
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りませんよ。僕みたいな子供が数奇な運命をたどっているな、としみじみと思っていたところです」
「………さすが勇者というべきか、お前はもう少し年相応であるべきだ」
「そうかもしれませんね。でも、仕方ありません。これが僕ですから」
ザフィーラさんが言いたいこともわかる。だが、僕の精神年齢は一度、二十歳まで達しているのだ。そこから十歳相当の態度をとれと言われても無理な話である。
「ふむ、そんなものか」
僕自身を否定したくないと思ったのだろう―――ザフィーラさんはそんな人(?)である―――褐色で、男の子である僕から見ても驚くような筋肉を持った腕を組んで深く何度か頷いていた。そんな彼に僕も、そんなもんですよ、と返そうとしたのだが、そのタイミングは、先ほどまで鍋をかき混ぜていたはずのシャマルさんの布を切り裂くような悲鳴によって逃してしまった。
「きゃぁぁぁぁぁっ! ザフィーラっ! なんで上半身裸なのよっ!」
そう、確かに今まで僕と話していたザフィーラさんは上半身裸だった。しかし、それが見苦しいか、と言われるとかなり鍛えていると一目でわかる上半身は、見たとしても不快な気持ちにはならない。だから、平気な顔をして話していたのだが、女性であるシャマルさんは違うらしい。
もっとも、ザフィーラさんが上半身裸である理由は、彼の右手を見れば明らかなのだが。
「なぜ、と言われてもお前が魚を獲ってこいというからに決まってる」
「服ぐらいは着なさよっ!」
シャマルさんが手を無茶苦茶に振り回したのだろう。先ほどまで鍋をかき混ぜていたお玉が手からすっぽ抜け、ザフィーラさんの頭にカツーンと当たった。本当は何か言うべきなのだろうが、僕は口をつぐんでただの傍観者に徹した。理由は言うまでもないだろう。
―――首を突っ込んでとばっちりはごめんだからだ。
◇ ◇ ◇
「主よ、今日も我らに恵みを与えてくださったことに感謝を」
シャマルさんの言葉に続いてその場にいた全員が「感謝を」と唱和する。もちろん、僕もだ。これは、要するに僕の世界で言うならば「いただきます」という感謝を示す言葉だ。祈りと言い換えてもいいのかもしれない。
次元すら異なる世界だというのに、神がいるとか、祈りをささげるとか、似通ったところが見つかるのが面白い。こういうのは、確か共時性……というのだったのだろうか。
神への感謝の祈りをささげた後は、ちょっと遅い朝食の時間である。朝から鍋を混ぜていたシャマルさんお手製のスープとザフィーラさんが獲ってきた魚の丸焼きという朝食。これでご飯があれば、僕の世界と変わらない朝食になるのだろうが。
僕の世界、というとじゃあ、この世界はどうなんだ? ということになるだ
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