第一部 学園都市篇
第2章 幻想御手事件
22.Jury・Night:『Howler in the Dark』U
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快さなどは皆無だ。命を蝕む喜悦に沸騰する、禍々しい玉虫色。その不快感に、表情を歪める。其処に息衝くもの、此方を覗き見る存在に。
命を削って感じたモノ、その痛み、その不快。その怒り、その理不尽を……全て。鋒先の向く彼方、全てをぶつけるのは――――目の前の異形!
「――――『ヨグ・ソトースの時空輪廻』」
一声。それだけで、十全。鋒の向く先、其処に在る全てが捩じ斬れる。刀、振るわずとも。刃、触れずとも。『門の神』の眼差しに晒された、時空自体が。
『ギ__がァ____ァァ____ァァァァ!』
縦に、横に、斜めに。点に、線に、平面に、立体に。戻り、止まり、進み、時間すら、空間すらも斬り裂かれた時空に。其処に在った異形もまた、同じ運命を辿るのみ。
最期に断末魔さえ斬り裂かれて、虚空の継ぎ目に呑み込まれるように消えていった。
「倒した……ん、ですか……? これで、終わり……?」
惚けたように、ただ、理解を越えている目の前の幾つもの超常。それが終わった事を察して、飾利が辛うじて口を開いた。
「…………」
「先輩……?」
だが、嚆矢は答えない。無視した訳ではない、ただ、考えている事があるだけ。
暗部での経験から、百分の一の状況を。
「ブラフ、か――――コイツは」
そう、口にする。理解したのだ、本能的に。『これは、紛い物だ』と、あの時、足下から感じたモノと競べれば――――雲と泥の差がある。。
「――――そう、その通りだよ」
「「ッっ――――!?」」
その二人に向けて、声が響いた。下水道、闇の満ちた地底を揺らして?
「流石は、我が女王のお気に入りの玩具か……具現程度で、顕在たるこの俺の分身を滅ぼすとは。あの“時計人間”や“黒い仏”が見込むだけはある……」
否、鼓膜だけを揺らして。革靴の音、響かせて――――。
「参ったね、まさか、昨日の今日でとはな……『突貫熱杭』、だっけ?」
「おや、ご存じに在らせられましたか、陛下、これは恐悦至極……」
天井を歩く、逆さまの人影が現れ出る。称えるように、蔑んで。見上げるように、見下して。微笑むように、嘲笑して。
つい先程。見た覚えのある、初対面のその人物。大学生くらいの年齢か、目付きの鋭い眼鏡の、オールバックの青年は――――その左手に、一冊の『本』を携えて。
「だが、認めない。俺は貴様など……絶対に!」
その嘲笑も、塗り潰される。嫉妬と憎しみ。色濃く、漆黒に。
「末期の祈りは十分でしょう? 一人で死ぬのではないのですから! 連れ添いならば、其処に態々、用意して差し上げたの
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