第一部 学園都市篇
第2章 幻想御手事件
22.Jury・Night:『Howler in the Dark』U
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今、手の内に在る対抗策足り得るものは……ただ、一つ。
――『賢人バルザイの偃月刀』……だな。でも、飾利ちゃんの目の前だ。こだわりッて訳じゃねェが、魔術を一般人に晒すのは、今までしてこなかった。
目線を、背中の方に。僅かに横を見遣れば、嚆矢の右手を見詰める彼女。驚いた顔で。
だから、普通なら気の触れる声に意識を向けずに済んだのか。
「銃……先輩、なんで銃なんて持って……」
「あ」
そうだった。『拳銃』も、十分に一般人には異質なもの。警察官や警備員ならば別だが、風紀委員が持つようなものではない。
しくじったかな、と思う。だが、それ以上に――――吹っ切れた。
「今更だ、なぁ――――」
取り出す。懐から、『断罪の書・断篇』を。其処に在る内容は、頭に入っている。本来は青銅の剣、だが此処にはそんな気の利いた物はない。
在るのは、黒鉄。右手の先、材料はコレくらい。
――――だが、知らない。お前は魔術は刻めても、刀の鍛ち方なんて物は。意志の籠め方などは。
そう、知りはしない。諭されたように、思ったように。飾利の頭があるのとは反対の耳、闇に満たされた……『虚空』が在る方から。
――――そう、無理だ。お前には、無理だ。お前には、分かっている筈だ。
『諦めろ』と。『諦めて、悲劇を受け入れろ』と。
燃え立つ三つの眼差しは闇に満たされた虚空から、嘲笑いながら囁き掛けて――――
「――――あァ……」
頷く。それ以外にはない。確かに、知らない。魔術は刻めても、想いを刻む方法など。
認めるしかない、それは。事実なのだから。
「関係ねェよ」
だから、だから。再度、右腕を伸ばす。異形に向けて、紙片を手に。詩編を手に。
ただ一つの、約束を果たすために。
「何しろこいつは……飾利ちゃんを泣かしたからな」
だから、その唯一の戦意の根元を示す。彼の誓約『女の子に優しくする』という、その自戒を。赤枝の騎士団の、誇りを掲げる。
口角を吊り上げて、敵を睨む。『正体不明の怪物』が牙を剥く。
『――――やれやれ』
その時、唐突に脳内に声が響く。呆れ果てるように、背後の闇に融けて消える。『やってみろ』と、『そんな事でこの闇を払えると思うのなら』と。影色の鋼鉄、軋むように嘲笑いながら。
『全ての影は不滅、死など無い。そう、無いのだから――――“闇に吠えるもの”もまた、再生不可能なレベルの致命傷を与えなければ鏖せはしない』
それでも、虚空からじっと、じっと。面白そうに、眺め続
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