第一部 学園都市篇
第2章 幻想御手事件
22.Jury・Night:『Howler in the Dark』U
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今は真実か。僅かな寂寥、胸に抱いて。
「――――『空白』」
『空白』の神刻文字、忘却をもたらす魔術を口遊んだ――――
………………
…………
……
――燃える。燃え尽きる。有り得ない、多寡が『人』の操る焔で……莫迦な、俺の『ドール讃歌』が。
のたうつように、地中から這い出した――――『闇に吠える者』。焦げた魔導書を左手に、焼けた体が崩れるように剥げ落ちて中から青年の姿が現れた。
しかし、勿論無傷ではない。全身、至るところに見える酷い火傷の痕。そして右腕は肩からだらりと、指先すら動かせもしない。
「ぐっ……あァァ……クソッ、餓鬼どもめ!」
右足を引き摺り、何とか大通りへ。明け方とは言え、先程の放棄区画とは違って人通りの絶えない其処に。
当然、その姿は人目を引く。しかし、今は人の目が在るところに居なくては。暗部の追っ手にでも見付かれば、今の状態では逃げる事すら儘ならない。
「早く……逃げないと……未元物質に、見付かる前に」
何より恐れるのは、その男。『スクール』のリーダーであるその男、学園都市の第二位。魔導書の力を持ってして、勝てるかは分からない。
何度か、救急車を呼ぼうかと声を掛けてきた人物も居たが、彼はそれを押し退けて歩き続ける。
――逃げる? 何処に?
「逃げる……都市から、出ないと」
今更、受け入れてくれる場所はない。学園都市最大級の暗部組織を脱走した時点で、もう――――安息など、この都市の中には。
――逃げて、どうする?
「逃げて、生きる……俺は、まだ死にたくない」
這いずる。学園都市の外に向けて。今までなら、地下を穿孔すれば良かった。だが最早『ドール讃歌』は機能の大半を失い沈黙、肉体のダメージのせいで演算もままならず、『突貫熱杭』も使えない。
出口は、ただ、外壁のみ。辿り着いても、出られるかどうかは怪しいが。『暗部に粛清命令が下っている』彼が、外に。
――無駄な足掻きだよ、そんな事。もう、君は終わりさ。
「誰――――だ」
気付く。頭の中で、嘲笑う者に。けらけらと、その『女』は。
「憐れで愚かな、三流の道化〜。君に、アンコールはないよ〜?」
虚空から、能面の如き笑顔。豪奢な赤地に炎の模様のサリー、アラビアックな黄金の装飾品。右手に掲げるランプには、風もないのに息づくように揺らめく焔。
見るだけで、心が高鳴る。まるで、断崖絶壁の先を望むように。命の危機に、震えるように。
「我が、女王……」
いつの間にか、愛していた『女』……『女』? こんな
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