第一部 学園都市篇
第2章 幻想御手事件
22.Jury・Night:『Howler in the Dark』U
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哮で掘り広げた大空洞に浮いて。突進の力、全て、己に返る。驚愕、全て、己に帰る。捻り潰されるように体、天井を削って。遍く、それすら、彼本人すら殺し得る力が。
一体、何が起きたのかと。怪物、人の思考に還る。理解不能、理解不能。最期まで、理解不能――――。
「莫迦が――――一方通行の力なんて、合気道には」
潰れる。叩き付けられたのは自らの重さで。在るのなら、頭からぐしゃり、と。壊れかけの体に、最後の人押しが加えられて。
「俺の理合には、無意味だよ」
乾きかけの青白い腐汁、撒き散らして。飾利の持つライターで火を灯した煙草、銜えた嚆矢の背後に。
人の技術、怪物を殺す技能が――――!
………………
…………
……
「嘘、だ――――」
その全てを察し、風の申し子は声を荒げる。カタカタと震えるマンホールの蓋の上で、彼女は――――
「嘘だ、『金の時代』の人間が死力を尽くしたものなら兎も角――――この時代の人間が、旧きものを討つなんて! 有り得ない、ヒューペルボリアの時代ならまだしも、『鉄の時代』の猿風情が!」
取り零した『獲物』を追い続けて、地下にまで風の目と耳を張り巡らせていた彼女は、激情のままに風を震わせて叫ぶ――――
「対馬、嚆矢――――お前は!」
………………
…………
……
ごう、と。最後に一度、下水道が揺れる。それは、主を失った家屋が風に吹かれるかのように。後は、崩れ去った瓦礫が残るのみ。そこは、彼が掘り抜いた隧道であれば。
最早、背後には――――何の意味もない腐汁と腐肉、その水溜まりのみ。ごぽりと青白く泡立ちながら、それも後、数秒で朽ちる。
一度、天を仰ぐ。穿たれた地底の穴から見える空、青みがかった、群青に染まりつつある夜明け。黄金の月が、眠りに就くように白く染まっている。
丁度登りやすくなった所を選び、歩き出す。
「終わったよ、飾利ちゃん」
「ふえ……」
「ゴメンな、こんな事に巻き込んで。全部、俺の所為だ」
背後に、声を掛ける。黙って待ち続ける少女に、嘲笑いながら苛立ちを向ける鋼の影に。
「……ほんとです、もう、これっきりにしてくださいね」
「ああ、肝に銘じる」
「ダメです、許しません……だから、明日、パフェを奢ってください」
「はは、御安い御用さ」
力なく笑い、軽口で返してくれた彼女に苦笑を。
優先する方など、考えるまでもなく。初めから、決まっている。
「目を、瞑って。後は、俺が何とかするから」
にこりと、笑って告げる。それは、どちらに? 決まっている、瞼を震わせ、泪を湛える少女に。
「先輩……?」
強がりすら、
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