第一部 学園都市篇
第2章 幻想御手事件
22.Jury・Night:『Howler in the Dark』U
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生きていたものだ。魔術の域に足を踏み入れて。いや、望んでそうしたのではなくとも……良く、生きていてくれたと思う。
だから……殺す。この子を狙ったあの、化け物を。正体が何でも、関係ねェ……ブチ殺す、何がなンでも。
決意し、そして感謝する。そんな彼女に向けてしまっていた拳銃の引金を引く前に……『自らの右手で悲劇の幕を上げる』前に止めてくれた――――『二つの右手』に。
例えそれが幻想でも、実在でも。
「感謝、だな」
「何がですか?」
「いいや、此方の話」
小首を傾げる彼女を余所に、汚水の中を歩く。ぬめつく底で滑らぬよう、痛む足首に意識を集中して。
――白井ちゃんの『空間移動』なら、上手く脱出出来たか? いや、あれは確か、移動先の座標が分からないと駄目なんだっけ……。
やっぱ、地道にマンホールを探すしかないか。携帯も通じないし。
この、地の底からの脱出孔を探して歩く――――
『_____________!』
「「――――!?」」
その、眼前に現れ出でる異形。吼えるように、闇の底でも。人の、当たり前に生きる人ならば、当たり前に凍りつかせる絶叫で。
だから瞬時に、ガバメントを構える。今、唯一の力を。魔力、神刻文字すらも籠めた『呪殺弾』で。『魔術使い』は、凍りつかされる事無く。
「チッ――――!」
「ひっ……」
異形、よろめくように這いずって。黒い、腐乱死体染みたそれ。グズグズに弛んだ表皮、円錐形の頭には、顔の半分もある歯の無い口腔。ぽっかりと。
忌まわしい。吐き気がする。生理的に、人が嫌悪を催すモのばかりで構成された、その存在。
最早、迷いはない。引金を引く、迷わず眉間と心臓に向けて。そこが、急所であると願いながら。
銃声は二発、それより早く閃光も二回。受けた魔弾も、二個の筈。神刻文字を刻まれて強化された、音速を越える銃弾だ。常人ならば、即死は免れまい。
『イイイイ______ィィィィ!』
常人ならば。先読みしたかのように崩れかけの腕を振るい、魔弾を叩き落とした、あからさまな異形に常識などは通じない。
咆哮に、空間が軋む。汚水の水面が泡立ち、黴塗れのコンクリートの壁面にヒビが走る。物理的な破壊力すら持つ吠え声は、雄々しくなど無く。卑劣で、悪意に満ちていて。
「クソッタレが――――第二位かっての!」
物理的に脳髄を揺らす声に悪態を吐き捨て、思考する。拳銃が駄目ならどうすれば良いか、思考する。
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