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魔王の友を持つ魔王
§59 叛旗の理由
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くものを不快にさせるような、声。眼前の山、だろうか。そこから聞こえる歪な音。

「っ!!」

 気持ち悪い、嫌悪感を呼び覚ます声。

「「う、ぐぁああああ!!!」」

「っ、お願い蛍火!!」

「何が――!?」

 背後の悲鳴に振り向き、絶句。皆が、倒れ伏している。

「恵那!?」

 唯一恵那だけが意識を保っているようだが、既に立つことすらおぼつかない状況だ。

「大丈夫。だけど、ちょっとキツいかな……」

 そういう彼女の顔は蒼白。額から汗が伝い落ちて。恵那ほどの実力者が最大限に呪力抵抗してこれならば、他の魔術師は無理だろう。

「この声か。悪趣味な」

 即座に元凶を看破する黎斗だが、対抗手段が無いことに歯噛みする。音を媒介とする敵の攻撃から人間を全員守ることは不可能に近い。耳栓があればマシだっただろうか。

「……いや、あっても変わんないな」

「くっ、くっ、くっ」

 闇夜から声だけが聞こえる。周囲を見渡しても、人影一つ見当たらず、建物の残骸が辺りに散らばり果てるのみ。

「「「く、るアアアアア」」」

 周囲を警戒する黎斗の耳に、唸るような声が聞こえる。一つでは無く、複数。しかも周りから聞こえてくる。自分たちの後ろから。

「皆さん大丈――!?」

 魔術師達の安否確認をしようと振り向いて、絶句。彼らの口が音源だったのだから。魔術師の口から、不快な唸り声が輪唱を始める。立ち上がった彼らの瞳は既に光無く、両手で胸をかきむしる。胸にあるのは――――小さな鱗。

「――――!!」

 ぎょっと目を見開く黎斗の前で、更に怪異は繰り広げられる。まず、彼らの顔が膨らんだ。瞼は閉じることが出来ない程に膨らんで。男女問わず湿っぽい灰緑色の肌に。

「な、何が……」

「あっちゃー。恵那も拙いかな……」

 そういう恵那の様子を見れば、鱗が身体に現れ始め。肌の色も冷たい色に変わり始めて。

「分断せよ」

 迦具土の力を緊急発動し瞬時に切断。”恵那”と”得体のしれない力”を一気に分断する。

「……ごめん、ありがと」

「気味悪いだろうけどコレ持ってな。ないよりマシだから」

 左目を抉りだし、恵那に渡す。視界内に恵那を収めるわけでは無いから、サリエルの効果を十全に発揮できるわけではないけれど。持っていればある程度は相手の能力を防げるだろう。再び変貌するより早く、元を断つ。

「で。この魚人軍団、任せても良い?」

 そんな会話をしている最中に、瓦礫を押しのけて、地面から植物の蔓が、蔦が、大量に飛び出て得物を求めてのた打ち回る。

「農耕神系統か?」

 少名毘古那神と同系統の能力を久々に見た気がする。こちらも植物に干渉しようとするが
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