第十話 本音と建前と
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とる事もできるかもな。でも、普通に生きられない俺たちが、それでも生きていこうとしたら……世に歯向かうクズになるか、クズなりに世の役に立つか、どちらかしか無いんだよ」
「……さっきから、人でなしとか、クズとか言ってるけど、それって誰が決めよる事なん?」
「え?」
「ユイからしたら、瀧くんは、普通の人間やし。クズちゃうんやけど。あんまし自分を卑下せんといてやー。ユイまで悲しくなってまうけん。」
「…………」
「あれー、何で泣いてんだお前ー?フられたかー?えー?」
気がついたら瀧は涙を流していた。古本が少しからかうような調子で、瀧の頭をポンポンと叩いた。瀧は、もっと泣いた。
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「ユイねー、何か白い部屋にずっとおるんよー」
「どこなんだよ。会いに行きたいのに。」
「ユイもよう分からんけんなー。」
「囚われの身か」
「久しぶりに散歩したいよー」
これが、ユイと瀧との最後の会話だった。
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「テレパシー?」
「えぇ、複製人間のイレギュラーでね、そういう能力を持った個体が生まれたのよ」
淡々と書類を整理している上戸に対して、瀧は身を乗り出した。上戸はデスクに置いたコーヒーを啜りながら、パソコンのディスプレーを眺めていた。
「どんな奴だ?」
「え?どんなって?」
「名前。複製人間と言えど、試験管培養を終えた段階で名前をあてがうはずだ。」
「えー……どんなだったかしら……」
上戸が操作するパソコンのディスプレーを瀧は食い入るように見つめた。そして、画面は答えを映し出す。
「……上永唯……」
瀧は、そのプロフィールの顔写真に釘付けになった。やたらと唇が分厚くて、ハッキリ言って不細工だった。だが……何故かその画面から目が離せなかった。
「こいつ、今どこに居るんだ?」
「え?」
「興味が湧いたんだよ」
「まぁ、モノ好きな……」
上戸はコーヒーをまた啜った。
「死んだわよ。」
「えっ」
「死んだのよ。もうこの子、この世に居ないわ」
「なっ何故だっ」
「何故って……元々突然変異で生まれた子だから。そもそも長く生きられるものでも無かったのよ。よく頑張ったんじゃないかしら。」
奪われるなら。
何故与えたのか。
どうして、自分は。
そんな出来損ないと出会って。
それに心を惹かれてしまったのだろうか。
(…さっきから、人でなしとか、クズとか言ってるけど、それって誰が決めよる事なん?)
「…………」
瀧は何かに目が覚めた。
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空中で、バシッ!ビシッ!
物がぶつかり合う音がするが、周りから見ると音だけが
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