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真鉄のその艦、日の本に
第十話 本音と建前と
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な徳富を瀧は追いかけ叩き斬るという事をしなかった。徳富は必死に瀧を逃れ、上戸を目指す。上戸はゆっくりと徳富に歩み寄る。

「た、す、け、て…上…戸さん…」

上戸の前まで血の跡をつけながら這って進み、その顔を見上げながら蚊の泣くような声で徳富が言うと、上戸は細面に優しい表情を作り、徳富を抱き上げた。

「遅くなってごめんなさい。もう大丈夫よ。」

徳富は幼い丸顔を弛緩させ、一筋の涙を流して失神した。上戸に担架を抱えた東機関の構成員が駆け寄り、ボロボロの徳富を担架に載せて後ろに下がっていく。後には、徳富の血でスーツを汚した上戸が残る。


これらを、瀧は微動だにせずに見ていた。

「さらに、できるようになったものね、瀧くん」

突然の上戸からの賞賛に、瀧はまた眉間に皺を寄せる。

「見ていたなら、なぜもっと早く出てこなかったんだ?あの娘が嬲られる前に。俺が本気を出すまでは、ずっと見ているつもりだったんだろう、物真似師。」
「それがあのコの任務だったんだもの。それをあのコはやりとげた。立派だわ、とても。」

いつも通りの涼しげな顔をしている上戸に、瀧はさらに苛ついた様子を見せる。

「貴様ら東機関のそういう所が気に入らないんだ。目的優先人命軽視の'人でなし'共、貴様らも、貴様らの事を喜んで使役するこの日本も、狂ってる。一度滅んだ方が良い。」
「あなた自身も'人でなし'の癖に、何を言うのかしら。東機関で叛乱分子を殺しまくったあげく、この騒ぎを起こして、数十万人を犠牲にして、自己矛盾も良いところよ。要するに瀧くん、あなたユイちゃんの件が恨めしいだけなんでしょ。」

瀧の口元がピクリと歪んだように見えた。

「…彼女は、確かに俺に、ある事に気づかせてくれたよ。」
「気づかせてくれた?こうやって国に逆らい組織に逆らい身勝手に自分の役目から逃げて枠組みに守られていた事も忘れたあげくに盛大に巻き添えを食わせながら“復讐”することが即ち‘人間らしさ”だって事を?」
「ッ!!」

今度は瀧の顔に明らかに怒りが浮かび、鞘に収めていた大太刀を素早く抜き放って構えた。
一方の上戸は涼しげな顔でゆっくりと、腰の鞘からサーベルを抜き放つ。

「"人もどき"と"人でなし'、さあて勝つのはどっちかしら?」

次の瞬間、二人の姿は消えた。


ーーーーーーーーーーーーーーー


派手に轟音が響き渡る。遠沢に体をひっつかまれて、横っ飛びさせられる。さっきまで自分が居た所が薙ぎ払われる。耳がバカになりそうだ。

「とっととくたばりやがれェ!んの分からず屋どもがァ!」

辻の声が爆音に重ねて艦内に響き渡る。
発令所から送り込まれた連中は、グレネードランチャーや重機関銃など、狭い艦内で使うにはおよそ相応しくな
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