芽生える小さなモノ
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利香ちゃんを家まで送り届けたのは日も落ちた時間になってしまった、それでも彼女の家に着いた際には彼女のご両親が玄関の前に待っていてくれて笑顔の利香ちゃんを見て丁寧にお礼を言われた
「ご両親も色々と思うところあったのでしょう」
「そうですね、でも結局は俺が何かしたわけではないですし…お礼を言われる程では無かった様な気もします」
結果として最後に受け入れることが出来たのは彼女自身が強く賢かったからだろう、ひとしきり泣き終え「もう大丈夫」と言った彼女の表情は今でも離れず目に焼き付いている
「人の心を救った感想は如何かしら?」
またこの人はからかう様な表情でそういう事を言う…心を救ったかぁ、そんな実感は無いんだよな
「心を救うとかそんなんじゃないと思いますけど、それでも最後に彼女が笑ってくれて良かったと思います」
「キスのご褒美も頂けたしね?」
先輩はクスリと笑う、最後にお礼がしたいと言われて、言われるがまま屈んだ俺の頬に彼女がキスのご褒美をくれた
「ご両親の前でですからね、変な緊張感がありました…」
「あの娘はすっかり貴方のファンになっていたし、将来が楽しみじゃない?」
「何の楽しみですか…俺にそんな趣味はないですよ」
馬鹿みたいな話をしながら学園近くまで先輩を送り届ける、彼女の住居は学園から直ぐ近くにあるらしい
「此処までで良いわ、ありがとう」
「そうですか…今日は色々とありがとうございました」
元は俺の我儘みたいな物だったし、利香ちゃんのご両親に話を通してくれたし、先輩がいなければ利香ちゃんが笑顔に戻る事も無かったかもしれない
「ねぇ、幸生?」
「はい?なんでしょう?」
先輩は改まって俺に向き直り真剣な眼差しを向ける、綺麗な青色の瞳が俺を捉えていた
「貴方が今日彼女にした事は誇れる事だと思うわ」
「誇るだなんてそんな…」
「いいえ、他人の為を思い、何かしようと行動に移し、結果貴方は彼女を救ったのだもの…本当に凄い事だと思うわ」
「あ、ありがとうございます」
いまだ俺をジッと見つめたまま、先輩は真剣にそんな事を言うのだから俺は照れてしまってまともに彼女の目を見られない
「貴方の姿勢はとても素晴らしく尊敬に値する事だと思うの」
「は、はい」
「だからこそ今日の事を誇りにして、忘れないでいてほしい…そうすれば何時か…」
「先輩?」
何だか最後の方は聞き取れなかったけど、先輩が何を伝えたかったのかは汲み取れた気がする、今日の気持ちを忘れずに今後も頑張れみたいな事だろう、しかしさっきまで真っ直ぐに俺を見ていた先輩が俯いてしまった…俺
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